siam manao-life

バンコク生活の中で気づいたことや感じたことを書き連ねます。タイの生活情報やタイ語のあれこれ、タイ国内旅行、近隣諸国訪問なども織り交ぜながら。

恋に酔って候(タイの天才詩人:スントーン・プー)

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バンコクは今日も曇り空。
最近、お酒を飲む機会も少なくなったのですが、ずいぶん弱くなったというか少しのお酒ですぐ眠くなってしまうまなおです。

 

もう酒には酔わないけれど まだ恋に酔っている
気持ちを抑えることなど どうしてできるたろう
酒の酔いなら朝には抜けるのに 
心の酔いは毎晩のこと・・・

ไม่เมาเหล้าแล้วแต่เรายังเมารัก สุดจะหักห้ามจิตคิดไฉน
ถึงเมาเหล้าเช้าสายก็หายไป   แต่เมาใจนี้ประจำทุกค่ำคืน
                (นิราศภูเขาทอง -สุนทรภู่)

 


これは、スントーン・プーというタイの有名な詩人の詩の一節です。

現王朝であるラタナコーシン朝初期(200年ほど前)の作品。


タイの古典というのはほとんどが定型詩で、難しい言葉ばっかりだったり、複雑な韻律の規則などで、チンプンカンプンだったりするのですが、この詩は、現代でもなじみのある比較的わかりやすい言葉が使われていて、かつ、親しみやすいテーマ(『酒』、『恋』)ということもあって、私のお気に入りの一節なのです。
というか、本当は、大学で習った古典の中で頭に入ったのがこれくらいしかないんですが・・・。

スントーン・プーという詩人、けっこう面白い人なんですね。
タイの詩聖と言ってもいいほどの大詩人なんですが、けっこう波乱万丈な人生を送っています。

王宮の役人時代には、後宮の女性に手を出したことで王子の怒りをかって投獄、そして追放。
大の酒好きで酒癖も悪く、王族を殴って投獄されたり、数人の女性との結婚と離婚を繰り返したり。
さらには、出家してみたものの、禁酒の戒律を守れずに僧籍からも追われたり・・・。
平民出身ながらも、その類まれな才能から宮廷歌人として召抱えられた天才詩人。
また、その才能と破天荒な行いから、時の国王の交代に伴って重用されたり虐げられたりした詩人でもあったようです(ラーマ1世からラーマ4世の時代)。
天才肌の人って、好き嫌いが分かれるところですものね。それを面白がる人もいれば疎ましく思う人もいるのは、古今東西変わりません。
そういった彼の行状や背景を知った上でこの一節を読むと、なんだかさらに感慨深いです。
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ちなみにこれ、「ニラート・プーカオトーン*1(นิราศภูเขาทอง:金山紀行詩)」という紀行詩集に収められているんですが、スントーン・プー40歳前後の作品です。
今で言う、アラフォー。当時のアラフォーと言えば、もうそこそこの歳だったと思うんですよね。
それなのに、なんだか若者のような恋への熱量が伝わってくる詩じゃありませんか?すてきです(笑)


恋する心はいつまでも持ち続けなきゃならないのだと思うのと同時に、今も昔も人の考えていることや気持ちなんて大して変わらんのだなと感心させられるのです。

※冒頭の日本語は、私の勝手な日本語訳なのであしからず・・・。m(_ _ )m

 

ではまた。

*1:プーカオトーンというのはバンコクの「黄金の山寺院」のことではなく、アユタヤにある「プーカオトーン仏塔」のことです。