バラナシ郊外にある仏教四大聖地(四大仏跡)のひとつサールナートで、タイ寺院、考古学博物館、ダメーク・ストゥーパやアショーカ王の円柱など、初転法輪(しょてんぽうりん)の遺跡を散策した後、大盛過ぎるランチに敗北したまなおと友人。
午後からも精力的にサールナート巡りを続けました。
※Varanasiという地名の日本語表記には、バラナシ、ベナレス、ワーラーナシー、ワラナシ、ヴァーラーナシー、ヴァラナシなど様々な表記が見られますが、ここでは「バラナシ」に統一します。
※また、Sarnathという地名もサルナート、サールナートなどの表記がありますが、ここでは「サールナート」とします。
ムーラガンダ・クティ寺院(初転法輪寺)
ランチを食べたレストランから徒歩数分で、ムーラガンダ・クティ寺院(初転法輪寺)の入り口に着きました。
※ムーラガンダ・クティ寺院は、「ムールガンダ・クティー寺院」「ムルガンダ・クティ寺院」などの表記もあります。
このムーラガンダ・クティ寺院は、1931年に建てられた比較的新しい仏教寺院で、外観はブッダガヤのマハーボディ寺院を模してあります。
マハーボディ・・・
ここで、ピンときて調べてみました。
そう言えば、先ほど訪れたブッダ・ダルマ・サンガという仏教施設の入り口に、「Maha Bohdi Society」と書かれていました。
ああ、なるほど。
あそこはスリランカのマハーボディー協会の施設で、このムーラガンダ・クティ寺院はそのマハーボディー協会(大菩提会)によって建てられたということらしいです。
堂内には戦前に日本人画家、野生司香雪(のうすこうせつ)による釈迦の一生を描いた壁画がありました。
かなり大きな壁画で見応えがあります。
正面には、黄金の初転法輪像が安置されていました。
お堂を出て境内を散策してみます。
境内の一角に、お釈迦様が5人の弟子に説法を行っている初転法輪の様子を表した像がありました。
袈裟や門の下に書かれた文字がミャンマー語だったので、ここはミャンマーの仏教徒が建てた施設なんでしょうか。
でも、その初転法輪像の周りはチベット仏教で使われるマニ車が取り囲んでいたりして、よくわかりませんでした。(もしかして、ミャンマーの仏教でもマニ車を使用するのでしょうか?)
並木道の先に、午前中見学したダメーク・ストゥーパが見えました。
<寺院情報>
ムーラガンダ・クティ寺院(初転法輪寺)
Mulagandha Kuti Vihara
時間:04:00 - 20:00 (昼休み閉門あり)
年中無休
拝観無料
中国寺院
ムーラガンダ・クティ寺院を出て、そのまま中国寺院へ行ってみました。
徒歩3分くらいの場所にあります。
お寺の看板が。
うーん、がんばったのはわかるけど・・・ なんとも、微笑ましい。
中国寺院ということで、タイにもあるような凝った装飾の派手な寺院を想像していたのですが、全体的に質素な感じがしました。
屋根も瓦ではなく薄い波板でした。
本堂入り口左手には、初転法輪像のレプリカがありました。
堂内もいたってシンプルな感じです。
ただ、なんとなく純粋な中国というよりは、なんだかいろいろミックスしているような気も・・・。
そして一番興味深かったのは、お寺の中門というか廻廊の一部にあった、四大仏跡(四大聖地)とサールナートの説明パネルです。
これらはなぜか全てタイ語(プラス英語)だったんです。
ここは、中国寺院ですよね?
中国語の説明は、ざっと見たところ見当たりませんでした。
タイ人が作った(少なくともタイ人が監修した)と思われますが、そんなにタイ人の参拝者が多いのでしょうか?
ちなみに、四大仏跡というのは、以下の場所になります。
タイ語だと、少し発音が違いますね。
- お釈迦様誕生の地・・・ルンビニー(ลุมพินีวัน)
- 悟りを開かれた地・・・ブッダガヤ(พุทธคยา)
- 初めて説法をされた地・・・サールナート(สารนาถ)
- 入滅の地・・・クシナガラ(กุสินารา)
日本寺院(日月山法輪寺)
サールナートには日本寺院もあるんです。
中国寺から一旦アショーク通り(Ashok Rd.)に出て少し南下し、小さめの通りを東へ200メートルほど入ると、日月山法輪寺という日本寺院があります。
ここはかなり日本的なお寺でした。(まあ、日本寺なんですが)
屋根は本格的な瓦ぶきで、本堂の建築構造も仏像もあまり違和感のない日本様式だったので、中で参拝していると、ここがインドであることを忘れてしまいそうになるくらいでした。
チベット僧院
サールナート最後に訪れたのは、日本寺からもほど近いところにある、チベット僧院でした。
この僧院の敷地の中に入ると、なんだか
ホッとしました。
私が今までに行ったことのあるインドと言えば、シッキム地方とかラダック地方など、ほぼチベット文化圏の場所ばかりで、こういう僧院ばかり巡っていたんです。
本堂の中は、壁画とか、ダライ・ラマ法王のお写真とか、チベット仏教の特徴的な仏像とか、すべてが見覚えのあるあの懐かしい雰囲気そのままでした。
本堂の裏手には大きなマニ車のお堂があったので、友人と3周ほど回っておきました。
オート・リクシャーでバラナシへ
サールナートで行っておきたいなと思っていた場所はだいたい巡ることができたので、そろそろバラナシ中心部へ戻ることにします。
チベット僧院を出たところで、オート・リクシャーが何台か停まっていました。
ゴドウリヤ交差点(ゴードウリヤー交差点)までいくらかと聞くと、200ルピーと言います。
まあ、それくらいは想定内だったのでOKしました。
再びバラナシ郊外の風景を眺めながら、ガタガタ揺られて帰ります。
普段、バンコクでもトゥクトゥクを利用することなんてほとんどありませんが、こうして久しぶりに三輪タクシーに乗ってみると、旅行気分が盛り上がっていいものですね。
バラナシ中心部に近づくと、相変わらず渋滞が酷くなってきました。
すると、運転手が交差点のだいぶ手前で停車します。
「あとは歩いてくれ」
「いや、もうちょっと先まで行って」と言っても、
「これ以上は行けない」と。
何これ、デジャブ?
こんなやりとり、昨日もしたような。
まあ、これ以上押し問答してもしょうがないしな・・・。
ということで、降りて歩くことに。
そうして、降り際に友人が運転手にお金を払いました。
そしたら、
「え、150ルピーですけど?」と運転手。
「だって、交差点まで行ってくれなかったでしょ?」と友人。
颯爽とリクシャーを後にします。
何これ、デジャブ?
こんなやりとり、どっかで見たような。
あーそうだ、行きの相乗りしていたインド人のおばさま2人がこうやって降りて行ったんでした。(その顛末はサールナートの前編を見てくださいね)
友人、かっこええ。
あのサリー来た渋いおばさまの姿が重なって見えました。(笑)
そんな友人を頼もしく思いながら、1キロ足らずの距離をゴドウリヤ交差点に向かってとぼとぼ歩いて帰ったのでした。
おわりに
仏教の聖地、初転法輪の地として知られるサールナート。
罰当たりなことを覚悟で言うと、日本でもタイでも、私にとっては、ほぼ伝説の人というか、架空の人物と言ってもいいくらいのレベルの、自分とはかけ離れ過ぎた、まさに天上の存在である、お釈迦様・仏陀が、かつて実際にいらっしゃった場所がそこにあるという不思議・・・。
そんな場所に行けたことが、私は単純に嬉しかったです。
仏教の難しいことは全然わかっていないし、日本やタイの各地にある仏足石(仏足跡)や、かつて仏陀が降臨されたと伝わる場所なんかを訪れても、正直言ってピンとこなかったのですが、お釈迦様が(実在の人物として)この場所で初めて説法されたと言われると、単細胞の私は、それだけで感慨にふけってしまいました。
かつて、お釈迦様が弟子たちに仏法を説き、瞑想をされた森。
現在は、後世に築かれた遺跡や各国の仏教寺院が点在するサールナートの町。
なかなか有意義で楽しい日帰り旅行でした。
ではまた。