4月最初の週末、アユタヤで開催されたタイの仮面劇コーン(โขน / khon)をテーマにしたお祭りに行ってきました。
今回は、タイだけでなくラオスやインドネシアからもラーマーヤナ物語の舞踊劇一団がやってくるというので期待して行ったら、期待以上に楽しかったです。
- Ayutthaya Khon Festival 2023
- 5日間開催
- ラーマーヤナ(ラーマキエン)について
- 女優さんにうっとりパレード
- 開会式・花火
- 4ヶ国合同演舞ステージ
- 仮面劇コーン「乳海攪拌」
- インド舞踊
Ayutthaya Khon Festival 2023
古都アユタヤで開催されたこのフェスティバルを知ったのは、タイの友人から送られてきたSNSのリンクでした。
第4回アユタヤー・コーン・フェスティバル(เทศกาลโขนกรุงศรี ปีที่ 4)
2023年3月30日〜4月3日までアユタヤの旧市街(城壁内)、ワット・マハータート寺院遺跡後ろの広場で開催。
どうやら今年で4回目のようです。
コーン(โขน)と呼ばれるタイの伝統仮面舞踊劇にはわりと関心がある私、今回初めて行ってみることにしました。
5日間開催
開催は5日間で、各日それぞれ違った催し物やステージがあります。
本当は5日全部行きたかったのですが、平日の仕事終わりにアユタヤまで行くのは厳しいので、4月1日(土)と4月2日(日)の2日間だけ行ってきました。
今回は、インドネシアやラオスからも舞踊団を招致して国際色豊かなフェスティバルとなっているようで、行く前から楽しみにしていました。
ラーマーヤナ(ラーマキエン)について
タイのコーン(仮面劇)で主に上演されるのは、古代インドの大叙事詩で神々の壮大な物語を描いたラーマーヤナ物語(タイでは『ラーマキエン』と呼ばれる)を題材にしているものが多く、このラーマーヤナ物語は、タイ以外の東南アジア諸国にも広く伝わっており、各国で伝統芸能として発展していった歴史があります。
以前、バリ島を旅行した時にも、ラーマーヤナをテーマにしたバリ舞踊をいくつか鑑賞しました。
男性の声の掛け合いが有名なケチャックダンスもラーマーヤナをテーマにアレンジしたダンスですが、これはまた近々書きたいと思います。(すっかり書くのを忘れていました。汗)
タイの仮面舞踏劇のラーマキエン(รามเกียรติ์)についての説明や、ラーマキエンのはじまりとなる物語についての記事も以前に書いていますので、よかったらご覧ください。
日本の神話もそうですが、古代インドの神様も現代の(凡人の)感覚からするとすごく斜め上の無茶な行いをなさったり、かと思えばすごく人間臭いところがあったりと、なかなか面白いです。
また、以前、アユタヤ郊外にあるコーンの博物館についての記事も書いていますので、ご興味あれば合わせてご覧ください。
女優さんにうっとりパレード
前置きが長くなりましたが、ここからは、週末2日間フェスティバルを鑑賞した中から印象的だったものをピックアップして紹介して行きたいと思います。
4月1日の夕方。
19時すぎからラーマーヤナをテーマとしたパレードがアユタヤ旧市街で行われました。
世界遺産の遺跡が点在する中を、煌びやかな民族衣装を着けた一行がそぞろ歩きます。
これは、なんとしても見なければ!
宿は旧市街内にあるお気に入りの定宿「ルアン・チャムニ・ヴィレッジ」です。
徒歩でワット・マハータート寺院遺跡のほうへ歩いて行くと、パレードの一行が待機していました。
少し人だかりがしているところに通りかかると、そこにはなんと有名女優のヌン・ウォーラヌット(นุ่น วรนุช)さんが。
なんて、知ったように書いていますが、実は私、芸能人とかには本当に疎くて、事前に彼女がこのパレードの主役としてシーダー妃(ラーマ王子の妻)に扮するという記事を読んだ時も、『なんとなく見たことのある女優さんだなあ』くらいの認識しかありませんでした。
でも、近くで見ると当たり前ですが、女優さんって美しいですね。
オーラが違う。(語彙力。。。)


どことなく、夏目雅子さんに雰囲気が似ているなと思ったり。
というか、いつも思うんですが、タイの芸能人って一般人との距離が近いですよね。
日本であのレベルの女優さんだったら、一般人がこんなに近くまで行って一緒に写真バンバン撮るなんてあり得ないんじゃないかと。
しかもね、私たちが写真撮ってたら、クルーのテレビカメラマンさんが、ちょっと逆光気味になっている私のためにわざわざ照明つけてくれたり。
(きれいに撮りなさいってことかな?笑)
そうこうしているうちに、パレードが始まりました。
ワット・マハータートの前から寺院の横を通って、後ろ側に造られた特設会場までのほんの数百メートルですが、華やかで良かったです。
まず、三頭の象(エラワン象)に度肝を抜かれました。
最初、えーーーーっと目を疑いました。
インドネシアからやってきたガルーダも素敵だったし、白猿の将軍ハヌマーンは飄々としてコミカルでした。


コーンの仮面をつけた騎馬隊もカッコよかったです。
ヌンさんも本当にきれいでした。
すまして乗っているだけかと思ったら、指ハート作ってウインクしたりしていて、すごくキュート!
なんかもう、にわかファンになっちゃいましたよね。(ミーハー)
これから映画やドラマなんかで見かけたら、私の中で、他の女優さんとは違う存在になること間違いなしです。
メイン会場の手前でパレード一行はステージ裏の控え場所に入って行ったんですが、何も考えずに象さんについて行ったら、私の後ろからヌンさんがスタッフの方と現れて、目の前で撮影が始まりました。
せっかくなので、プロカメラマンさんたちに混ざって撮影させていただきましたよ。
(イベントのスチール撮影現場で、見知らぬ日本人が目の前で写真撮ってても何も言われないって、改めてタイってすごい)


開会式・花火
今回のフェスティバルは5日間開催でしたが、4月1日がメインイベントの日という位置付けだったのか、先ほどのパレード参加者たち全員がステージに上がり、アユタヤ県知事が挨拶を行いました。
そして、シーダー妃に扮したヌン・ウォーラヌットさんがステージに登場し、県知事による正式な開会宣言が行われると、豪華な花火が打ち上げられました。
この演出、なかなか見応えがありました。
このパレードから開会式の花火までのようすをインスタグラムのリールにあげたら、タイ人の方からの反響がすごかったです。(あくまで『私にしては』ですけど)
やっぱり3つ頭の象のインパクトやヌンさんの影響でしょうかね。
4ヶ国合同演舞ステージ
開会式に続いて披露されたのは、4つの国のダンサーによる合同演舞です。
4つの国とは、タイとラオス、インド、インドネシアです。
ただ、正確に言うと、インドのダンサーは、全員タイ語を話していたのと、見た目もとてもタイ人っぽかった(特に男性)ので、おそらくインドから招致した一団ではなく、インド舞踊を習得したタイ人、またはタイ在住のインド人コミュニティーの人か何かだと思います。
タイとラオスは共に仮面劇コーンの衣装で、とてもよく似ていますが、やはり衣装の色使いや装飾が所々異なっていました。
こちらはタイ。
そしてこちらがラオス。
インドは衣装や女性の装飾などから、わかりやすいですね。
インドネシアの方々は、私が普段見慣れていないのもありますが、エキゾチックで男性も女性も独特の迫力と色気がありました。
ただ、あいかわらず着ぐるみのハヌマーンはコミカル。
(よく見ると顔は厳めしかったりするのですが)
各国の煌びやかでゴージャスな衣装と踊りで繰り広げられるステージは、とても華やかでした。
仮面劇コーン「乳海攪拌」
タイの仮面劇コーンによる「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」の上演。
タイ語では、「ตำนานกวนน้ำอมฤต(タムナーン・クワン・ナーム・アマリッ)」という名前がつけられていますが、これは、不老不死の聖水「アムリタ」を乳海攪拌によって作り出した物語を指しています。
この乳海攪拌というのは、古代インドの有名な神話で、簡単に言うと、鬼(アスラ)と神々(天人)との壮大な綱引きです。
巨大な亀の上に乗った山にナーガ(蛇神/龍王)を巻き付け、それを鬼と神々が引っ張り合うことで乳海が掻き回され、そこから不老不死の聖水アムリタが生まれるのです。
(亀さんもナーガさんも辛そう。。。笑)
この話がモチーフになっているあるものについて、タイ好きな方ならピンと来るんではないでしょうか。
そうです、スワンナプーム空港の出国審査を抜けたところに展示されているモニュメントがこの乳海攪拌です。
また、カンボジアのアンコールワットの第一回廊にも有名な乳海攪拌のレリーフがあります。


私、この乳海攪拌の場面をコーンで上演されているのを見たことがなかったので、すごく楽しかったです。
私が会場に着いた時には、既に特設の椅子席は人でいっぱいで、仕方なく芝生の上に腰を下ろしたんですが、まさにステージの真ん前、かぶりつきで見ました。
仮面劇鑑賞
鬼(アスラ)たちの登場。


鬼たちと神々の戦い。
仮面劇の戦いの場面では、敵の足から背中に跨って立ち上がるのが決めのポーズで、ここで拍手が沸き起こります。


ヴィシュヌ神の舞。
(タイでは『ナーラーイ神』(พระนารายณ์)と呼ばれるのが一般的)
シヴァ神(中央)、ブラフマー神(右)も登場。
三大神勢揃い♪
そして、鬼たちと神々との1000年にも及ぶ大規模な綱引き(ナーガ引き)が繰り広げられます。
綱引きをしつつ、さまざまな生命のエキスが溶け出した乳海を撹拌して、不老不死の聖水アムリタを作るのです。
毒を吐くナーガの頭側を鬼が、ナーガの尾側を神々が引いています。
そして、とうとうアムリタができました。
真ん中で医神がアムリタの入った壺を持っています。
アムリタを取り合う神々と鬼たち。
鬼たちを惑わして聖水を与えないようにする美女。




ようやく綱引きから解放されてホッとしている(であろう)、山を背中に乗っけた大亀さんが後ろに見えます。
余談(アムリタを飲んだ鬼)
ここで、ちょっと余談です。
聖水アムリタを巡る鬼と神々との争奪戦の末、最終的にアムリタは神々のものとなるのですが、神々の目を盗んでこっそりアムリタを飲んだ鬼(アスラ)がいます。
この鬼は誰でしょうか?
という質問を、この劇が始まる前に当イベントの総監督者でもあるスラット博士がステージで観客に投げかけました。
皆さん、ご存知でしょうか。
私は知っていました。(キリッ)
ステージ前の子供が手を挙げて、正解を答えました。
ラフー(「ラーフ」「ラーフー」とも)と言う鬼です。
ラフーがこっそりアムリタを飲んだのを目にした太陽神と月神は、ヴィシュヌ神に報告します。
すると、ヴィシュヌ神は円盤を投げてラフーの胴体を切り落としてしまいます。
ところが、不老不死のアムリタを口にしたラフーは、上半身だけになっても死ぬことはありませんでした。
告げ口をした二神を逆恨みしたラフーは、太陽神と月神を飲み込んでしまいます。
ところが、下半身がないため、しばらくすると太陽神と月神はすり抜けてしまいます。
これが、日食(日蝕)と月食(月蝕)の起源ということです。
私は、このなかなかよくできた神話が好きで、ラフーのことを覚えていたんですが、後でタイ友が「実はあの質問の時、『トッサカン』だと思ってたんだよね」と自白した時は、2人で大笑いしました。
「子供や外国人(私)でも知っていたのに恥ずかしい!」と。
※トッサカン = ラーマキエン(ラーマーヤナ物語)に登場する十の頭を持つ羅刹(鬼)の王、ラーヴァナ。
でも、内心ちょっと悔しかったみたいで、その後、彼は家族や知り合いに片っ端から聖水を盗み飲みした鬼について知っているかと尋ね回ってました。(笑)
彼の名誉のために言っておくと、タイ人でも古典や仮面劇に興味がない人は、結構知らなかったりします。
インド舞踊
タイの仮面劇上演に引き続いて、ステージではインド舞踊が披露されました。
まったく詳しくないのですが、タイのゆらゆらした踊りとは雰囲気が違って、躍動感のあるしなやかな身のこなしが魅力的でした。
実は、女性陣はインド風のメイクをしていたのであまり気付かなかったのですが、男性陣は明らかにタイ人っぽい3人だったので少し違和感を覚えていたんです。
そしたら、最後の記念撮影の時に思いっきりタイ語で会話していたので、「え、やっぱり?」となりました。
タイ友は「彼らはどう見てもタイ人だよ」と言っていました。(タイに住むインド人とかハーフの方とかの可能性もありますが)
いずれにしても素敵なダンスだったので、次回インドへ行くときは、本場のダンスもじっくり鑑賞してみたいなと思わせてくれました。
これでこの日(4/1)の公演は終了です。
最後に、この日の演者がステージに上がって来て、観客との記念撮影に応じていました。
いやはや、とても楽しいアユタヤの夜でした。
長くなったので、翌日の公演については次回に。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた。