世界遺産の町で行われた伝統の仮面劇コーンとラーマキエン(ラーマーヤナ物語)をテーマにしたお祭りの続きです。
日曜日の夜は、迫力のあるエキゾチックなダンスや巧みな人形使い、子供とは思えない厳かで幽玄な仮面舞踊など、国際色豊かなステージに魅了されました。
開演までの過ごし方
前日土曜日の豪華で華やかなパレードや正式な開会式、仮面劇コーンの「乳海撹拌」の面白さなど、余韻冷めやらぬ日曜日の朝。
前日の様子は、こちら。
最近、アユタヤでお気に入りの定宿化している「ルアン・チャムニ・ヴィレッジ」で朝ごはんを食べたり、宿でゆっくり過ごしました。
昼は、タイ友のリクエストで、日本食レストラン「黒田」でランチ。
かつてはバンコクにもあった庶民的レストランです。
昼間っから満腹。
午後は、アユタヤの市場をぶらぶらして、再び宿でまったり。
この時期(4月初旬)のアユタヤは猛暑。
内陸だからでしょう、バンコクよりもずっと暑くて、午後の日差しの中を観光などする気にはなれないのです。
日差しが多少和らいだ17時半過ぎ。
ようやく活動開始です。
宿から歩いてワット・マハータート寺院の脇道を通りつつ(できるだけ木陰のある道を選ぶ)、フェスティバルの特設会場まで向かいます。
この時点でまだ椅子席に座っているのは数人のみ。
ステージ裏のイベントブースを見て回ります。
出店もありました。
ここで、当イベントのTシャツなどを購入。
(イベントTシャツなんてあまり着る機会がないんですけど、なぜかこれは欲しかった)
そうこうしていると、ラーマーキエンの人形劇が始まる時間に。
ステージ前に戻ると、既に観覧席の椅子は満席。
このイベントのこと、あまく見ていました。
仕方なく、昨夜と同様にまた芝生の上に座ることに。
地べたに座るのはいいんですが、途中で腰や足が痛くなってくるのが辛いお年頃です。(笑)
人形劇(人魚をくどいて石橋をかけるハヌマーン)
18時半からステージで行われたのは人形劇(フン・ラコーン・レック)で、ラーマキエン(ラーマーヤナ物語)の一場面が演じられています。
鬼の王トッサカン(羅刹・ラーヴァナ)に連れ去られた妻のシーダー妃を奪還するために、ラーマ王子は白猿の将軍ハヌマーンたちと共にトッサカンの住むロンカー島(ランカー島)へと向かいます。
ラーマ王子の大軍は島へ渡るための石橋を造り始めますが、造りかけた石橋がなぜか崩れていきます。
これは、トッサカンの娘である人魚姫スワンマッチャーの命令で人魚や魚たちが妨害していたからでした。
それを知ったハヌマーンは、海に潜ってスワンマッチャーをなんとか懐柔しようと試みます。
はい、人魚姫を妻にしようと口説くんですね。
もちろん、そんなにすんなり上手くいくわけはありません。
スワンマッチャーも抵抗します。
その辺りのやり取りが人形によって演じられるわけです。
タイの人形劇は、1体の人形に対して3人の人形使い(黒子)が操るのですが、人形使いが人形と同じ動きをするのが特徴的です。
途中、ハヌマーンとスワンマッチャーが観客席に入って行っていくというサービスも。
子供たちは(いや、大人も)大喜びでしたね。
結局、ハヌマーンはうまいこと人魚姫を口説き落とすことができたのですが(後に子供まで生まれる)、冷静に考えると『敵の大将の娘を利用するなんて、そこに愛はあったのか?』ってなりますよね。
ま、戦っている間に愛が芽生えたのでしょう。(知らんけど)
ラオスの仮面劇「黄金の鹿」
続いて、今度はラオスの仮面舞踊団による上演です。
題材は、同じくラーマーヤナ物語。
この場面は、ラーマ王子の妻、シーダー妃がトッサカンに連れ去られる場面を描いています。
ラーマ王子とシーダー妃、ラーマ王子の弟ラクシュマナ王子(タイ語ではプラ・ラック)一行が森の中を歩いていると、目の前に黄金の鹿が現れます。
実は、これはトッサカンの策略で、黄金の鹿も鬼が化けたものなんですが、そうとは知らないシーダー妃はその美しさに魅了され、この黄金の鹿を捕まえるようにラーマ王子とラクシュマナ王子に懇願します。
そして、鹿を追って行った2人が不在の隙を狙って、トッサカンはシーダー妃を拉致するのです。
シーダー妃が1人でいるところにトッサカンが現れますが、結界が敷いてあるので中には入れません。
そこで、トッサカンは仙人に化けてシーダー妃を結界の外へ誘き寄せ、捕まえました。
これを見たラーマ王子と親交のある鳥の王が、トッサカンに立ち向かいますが、敢えなくやられてしまいました。
こうしてシーダー妃はトッサカンに拉致され、ラーマ王子とその一行によるシーダー妃奪還の物語が始まるのでした。
ラオスの仮面劇は、基本的にタイのコーンと非常によく似ていますが、ところどころ衣装や装飾など雰囲気の違いを感じることができました。
圧巻「トッサカンの舞」
続いて、ラーマキエンでは敵側の主役である鬼の王トッサカンの舞です。
タイ人の子供が1人で舞いました。
これ、私はかなり感動しました。
子供とは思えない、堂々としてしなやかな踊りは、私的にこのイベントでトップクラス。
悪の権化として嫌われることの多いトッサカンですが、この踊りではどことなく孤高の美しさがありました。
『本当に子供?背の低い熟練の大人が踊ってるのでは?』と思うほど、時に勇ましく時に幽玄で美しい舞でした。
インドネシア舞踊「ランカー炎上」
いよいよ、インドネシア一行の登場です。
パレードや合同ステージの時から、気になっていたんです。
演目は、「ランカー炎上」
シーダー妃が捕らわれているランカー島(ロンカー島)のトッサカンの居城へ偵察に行ったハヌマーンが、王宮もろともランカーの都を焼き尽くす場面です。
シーダー妃の前に現れたハヌマーンは、怪しいものではなく味方であることを信じてもらうために、ラーマ王子から預かった指輪をシーダー妃に差し出します。
シーダー妃はハヌマーンのことを信用しますが、このまま猿と逃亡したとあっては沽券(こけん)に関わるので(気位高っ!)、一旦ハヌマーンは帰します。
ハヌマーンはまもなくラーマ王子が助けに来ることを告げて去ろうとしますが、敵の鬼に見つかってしまいます。
大暴れの末、ハヌマーンはトッサカンの息子インドラジット(イントラチット)にわざと捕まって相手を油断させます。
そして、体に火を放たれた瞬間にハヌマーンは縄を解き、王宮や町の中を駆け巡り、体についた炎でランカーの都を焼き尽くしてしますのです。
この躍動感、タイの仮面劇とはだいぶ異なりますよね。
最後は、ラーマ王子に救出されたシーダー妃が仲睦まじく「めでたし、めでたし」みたいな。
(おそらく、ランカー島が焼かれた後のラーマ王子の大軍と鬼たちとの死闘場面は省略されているのかと)
インドネシアのエキゾチックでエネルギッシュなステージに、食い入るように見てしまいました。
いやーあ、楽しかったです。
タイの仮面劇も楽しいですが、インドネシアのゴージャスで動的な表現も素敵でした。
仮面劇「漂う夫人」
この日最後の上演は、タイの仮面劇コーンによる「ナーンローイ(นางลอย)」という演目でした。
直訳すると「漂う夫人」というような意味なんですが、この演目も今まで見たことがありません。
冒頭でシーダー妃が登場し、舞を踊ります。
実は、このシーダー妃は本物ではなく、トッサカンの姪のベンチャカーイ(ベンヤカーイ)が化けているのです。
トッサカンもすっかり騙されて浮かれています。
しかし、本物のシーダー妃ではないことを知ったトッサカンはびっくり!
怒ったトッサカンに姪も側にいた侍女たちも大目玉を食らいます。
ただ、そこでトッサカンは閃いたのです💡
こんなに瓜二つに化けられるなら、姪にシーダー妃が死んだふりをさせて、ラーマ王子に奪還を諦めさせればいいのだと。
場面は変わって、ラーマ王子たちの陣営。
ちなみに、これは舞台転換中の写真ですが、改めて、世界遺産の遺跡をバックにしたステージってすごいですよね。
ラーマ王子と弟のラクシュマナ王子が登場します。
家来の猿や鬼(味方の良い鬼)たちも集まります。
陣営の前の川にシーダー妃の亡骸が漂い流れ着きます。
それが偽物だとは知らないラーマ王子は、嘆き悲しみます。
そして、ラーマ王子は「シーダー妃が死んでしまったのはお前のせいだ」とハヌマーンを叱責します。
ランカーの都を焼き尽くすなど、命令以上のことをしでかすから、トッサカンが怒ってシーダー妃をこんな目に合わせたのだと。
ハヌマーンは、目の前のシーダー妃の体には危害を加えられた形跡がなく、何日も川を漂ってきたのに全く損傷がないことを不審に思い、ラーマ王子にこう言いました。
「これが本当のシーダー妃の亡骸だとするならば、火葬して確かめてみてはいかがでしょうか?そしてもし本物だったならば、私を処刑してください」
ラーマ王子は承諾します。
家臣たちが薪を持って来て、シーダー妃の横たわる台座の下に置き、火をつけました。
炎の熱さに耐えきれなくなったベンチャカーイは、煙と共に逃げ去りました。
ハヌマーンが追います。
ステージから降りて観客席のほうへ逃げたり。
再びステージに上がったハヌマーンは、もう許さないぞとばかりに飛び跳ねます。
本気を出すハヌマーン。
そして、とうとうベンチャカーイを捕えたのでした。
このシーダー夫人に化けたベンチャカーイがラーマ王子の前に流れ着く一幕は、今まで見たことがなかったこともあり、とても興味深かったです。
(途中、少し単調な印象を受ける場面もありましたが、それは私には難しい内容だったからだと思います)
以上、アユタヤの歴史公園内で開催されたラーマーヤナ物語に関するとても楽しいイベントでした。
また次回も参加・鑑賞してみたいです。
ではまた。