洗濯機が止まってさて干すかというタイミングで雷鳴が轟き大粒の雨が降ってきた今朝のバンコクです。おはようございます。
パスタやピザやラザニアの国と言えばイタリアを思い浮かべると思うのですが、これらのいわゆる“Italian food”のことをみなさんは日本語でなんと呼びますか?「イタリア料理?」「イタリアン?」「イタリアン料理?」
やはり「イタリア料理」というのが一番スタンダードな言い方でしょうか。でも会話では「今日はイタリアンにする?」なんて使い方をよくしますよね。「イタリアン料理」というのは使わなくはないかも知れませんが私の中ではあまりしっくりこない気がします。人それぞれ言葉に対する感覚は違うのでどれが正解ということでもないのかも知れませんが。
「アハーン・イタリアン」or「アハーン・イタリー」
ではタイ語ではどうでしょうか。
「อาหารอิตาเลียนアハーン・イタリアン」なのでしょうか、「อาหารอิตาลีアハーン・イタリー」なのでしょうか。
実は、そのあたりのことを書いたタイ語のコラムを見つけたので、今日はその内容を簡単に紹介しようと思います。
そうです、出典はいつもの王立学士院(王立協会)のウェブサイトです。
基本は名詞+国名
日本語でいうところの「~人」、「~料理」、「~語」といった国籍やその国と結びついた文化などを呼ぶ場合の、王立学士院が規定した外来語表記の基本ルールは、「名詞(N)+国名」なんです。
つまり、ชาวอิตาลีチャーオ・イタリー[chaaw itaalîi]=イタリア人、อาหารอิตาลีアハーン・イタリー[aahǎan itaalîi]=イタリア料理、ภาษาอิตาลีパーサー・イタリー[phaasǎa itaalîi]=イタリア語、が正しい呼び方・表記になります。
英語表記では、“Italian people”、“Italian food”、“Italian language”でも、タイ語では「ชาวอิตาเลียนチャーオ・イタリアン」、「อาหาอิตาเลียนアハーン・イタリアン」、「ภาษาอิตาเลียนパーサー・イタリアン」ではありません。*1
同じように、“Swedish people”(スウェーデン人)= คนสวีเดนコン・サウィーデン[khon sawiideen]、“Hungarian dance”(ハンガリーダンス) = ระบำฮังการีラバム・ハンガリー[rábam haŋkaarii]となります。
日本語でも基本的には「国名+(人/料理/語etc)」ですから、似てますね。
慣用による例外
基本は「N+国名」というルールなんですが、慣用的に昔から使われてきた言葉に関しては、例外として慣用に従うことが規定されています。
例えば、ドイツは国名がGermanyでタイ語では ประเทศเยอรมนี プラテート・ヤーラマニー [práthɛ̂ɛt yəəramanii] なんですが、「ドイツ語(German language)」のことはタイ語で「ภาษาเยอรมันパーサー・ヤーラマン [phaasǎa yəəraman]」といい、「ภาษาเยอรมนีパーサー・ヤーラマニー」とはいいません。
これは古くからそう呼んできた慣用に従ったものです。
以下、慣用に従った例外(N+国籍となるもの)をいくつかまとめておきます。
国名 |
N+国籍 |
使用例 |
ドイツ ประเทศเยอรมนี [yəəramanii] |
N+เยอรมัน |
ภาษาเยอรมัน [phaasǎa yəəraman] ドイツ語 |
ギリシャ ประเทศกรีช [kréet] |
N+กรีก |
เรือกรีก [rʉʉa krìik] ギリシャ船 |
アイルランド ประเทศไอร์แลนด์ [ai lɛɛn] |
N+ไอริช |
ชาวไอริช [chaaw ailít] アイルランド人 |
オランダ ประเทศเนเธอร์แลนด์ [neethəə lɛɛn] |
N+ฮอลันดา or ดัตช์ |
ชาวฮอลันดา [chaaw hɔɔlandaa] オランダ人 |
スイス ประเทศสวิตเซอร์แลนด์ [sawítsəə lɛɛn] |
N+สวิส |
ผ้าสวิส [sawít] スイス生地 |
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国 |
N+อังกฤษ |
คนอังกฤษ [khon aŋkrìt] 英国人 |
アメリカ合衆国 สหรัฐอเมริกา [sahàrát ameerikaa] |
N+อเมริกัน |
รถอเมริกัน [rót ameerikan] アメリカ車 |
イタリア料理は「アハーン・イタリー」なのに、アメリカ料理は「アハーン・アメリカン」なんですね。
「ミャンマー」は「パマー」
また、ミャンマーは日本でも昔はビルマ(Burma)と呼んでいましたが、タイでは現在も พม่า パマー [phamâa] と呼びます。これは古くから使われてきた慣用に従ったもので、王立学士院と外務省は、たとえ正式名がUnion of Myanmarとなった今日でも、タイ語では สหภาพพม่า サハパープ・パマー [sahàphâap phamâa] とするとしています。
一般に、ミャンマー(国)「ประเทศพม่าプラテート・パマー」、ミャンマー人「ชาวพม่าチャーオ・パマー」、ミャンマー語「ภาษาพม่าパーサー・パマー」という具合になります。
(参考:เว็บไซต์ของสำนักงานราชบัณฑิตยสภา (Office of the Royal Society) :http://www.royin.go.th/)
まとめ
国名や国籍などをタイ語で外来語表記する場合のルールや例外を簡単にお伝えしましたが、実は日本語における外国名の呼称・表記の方法もその言葉が入ってきた時代や慣用によってまちまちなんですよね。(現地音主義と慣用主義の併用とか、英語由来、ドイツ語由来、フランス語由来、その他の言語由来とか…)
このように他国の呼称・表記の方法は一筋縄にはいかないもので、決まったルールがあるようでないのもタイ語だけに限ったことではないんですね。
以上、タイ語の豆知識でした。
ではまた。
追記
イタリア料理は「アハーン・イタリーอาหารอิตาลี」が正しいというような書き方をしましたが、これはあくまで王立学士院(王立協会)が規範としているもので、実際には「アハーン・イタリアン」と書かれている場合なんかも多くあります。
さっそく実例が見つかりましたので追記させていただきます。
*1:あくまで王立学士院の規範であって、実際には『~イタリアン』が使われている場合もあります。