どこの誰が言ったかはわかりませんが、世界で一番美しいというふれこみの大地の女神「プラ・メートラニー」(地母神)がノンタブリー県のとあるお寺にあるというので、先日この目で確かめに行ってきました。
地母神「メートラニー」とは
プラ・メートラニー(พระแม่ธรณี)は、お釈迦さまが悟りを開かれる直前に大地から姿を表し、悪魔を洪水で押し流した女神です。
タイのお寺で、ひとつに束ねた長い髪を手で絞るようにしている女神の像や絵を見たことがある方も多いかと思いますが、あのお方が、プラ・メートラニー(以下、メートラニー)です。
降魔成道とメートラニー
お釈迦さまが菩提樹の下で坐禅を組み瞑想をしていると、それを阻止しようとする悪魔(マーラ)たちが、あれやこれやの手を使って攻撃したり誘惑したりしてきますが、お釈迦さまは動じません。
そして、「お前の前世での善行を証明することなどできはしまい!」という悪魔の挑発に答えるように、お釈迦さまが大地を指さすと、女神メートラニーが現れ、前世での数えきれない善行で蓄えられた水が絞った髪から沸き起こり悪魔を飲みこみます。
かくしてお釈迦さまの功徳は証明され、その後、悟りを開かれる(成道)わけですが、タイの寺院ではこの場面を降魔成道図(降魔調伏図)として壁画に描かれることが多いのです。
※降魔成道のエピソードは数種類あります。タイではこの地母神が現れるバージョンが一般的です。
ワット・チョンプー・ウェーク寺院へ
そんなわけで(どんな?)
先日、壁画に描かれたメートラニーが非常に美しいと評判のお寺へ拝観に行ってきたのです。
世界一美しいメートラニーがいるという噂のお寺、ワット・チョンプー・ウェーク(วัดชมภูเวก)は、バンコクの北、ノンタブリー県にあります。
このお寺は、1682年アユタヤー王朝ナーラーイ王の時代に、モン族によって建てられた仏塔がはじまりだと考えられいます。
プラ・ムタオ(พระมุเตา)と呼ばれるモン様式の仏塔です。
新布薩堂(本堂)
まずは、新しく建てられた布薩堂(本堂)から。
堂内は明るく、正面には大きな菩提樹が描かれ、その前に降魔印を結んだスコータイ様式の本尊が安置されていました。
堂内側面の壁は、色鮮やかな壁画で埋め尽くされています。
上の2段にはお釈迦さまの生涯(降誕から入滅まで)の様子が順を追って描かれています。
本尊の対面の壁一面には降魔成道図が描かれており、お釈迦さまの下にメートラニーの姿があります。
このメートラニーも美しいですが、これが今回探し求めている世界で一番美しいメートラニーではありません。
窓のある下の段には、お釈迦さまの前世に関する物語の場面が描かれています。
世界一美しいメートラニー(旧布薩堂)
新しい布薩堂の南側に古い布薩堂が建っています。
このお堂、三角屋根のちょっと可愛らしい形だと思いませんか?
タイ語でウィランダー様式の建築と呼ばれているらしいのですが、ウィランダーというのは、実はオランダのことなんです。
アユタヤ時代には、オランダをはじめとする西洋人の商人たちもたくさんアユタヤにやってきており、彼らが建てた小さなカトリック教会の建築方式(の応用)がタイでも広まったと考えられているそうです。
切妻部分には芙蓉の花の装飾が施されています。
花の中心部には陶器が使われていますね。
よーく見ると、三角の頂点部分にそれぞれ天人の像が立っています。
こちらは後ろ側の切り妻部分ですが、独特なお顔立ちですよね。
ま、それはさておき。
世界一美しいメートラニーは、このお堂の中にあるのです。
さっそく堂内に入ってみましょう。
正面には黄金の仏像が安置されており、背景には両側に2体の仏陀像が描かれています。
両側の壁には、お釈迦さまの生涯とお釈迦さまの前世物語(ジャータカ)を題材にした絵が描かれています。
その中でも最も目を引くのが、本尊の対面、入口の上の壁に描かれた降魔成道の場面です。
降魔成道といえば、メートラニーさまの登場です。
それでは、世界で最も美しい大地の女神「プラ・メートラニー」の姿を拝見しましょう。
じゃーん!
じゃじゃーん!
アユタヤ時代中期に描かれたと言われる、しなやかなポーズのメートラニーさま。
確かに、艶やかさと気品を併せ持つ美しいお姿ですね。
おそらく、このメートラニーを手本に描かれたものが、現代のタイ寺院にはたくさんあるのだろうと想像します。
礼拝堂
旧布薩堂の後ろに、ほぼ同じような形の礼拝堂(ウィハーン)があります。
ただし、こちらの礼拝堂は布薩堂と違って屋根の軒(のき)の部分はありません。
布薩堂と同じ時代に建てられた古いお堂だと思われます。
中には宝冠仏が安置され、壁には古い壁画が残っていましたが、静かに瞑想なさっている方がおられたので、礼拝して数枚写真を撮ったら、邪魔をしないように外へ出ました。
仏足石堂
礼拝堂の裏手の小高くなった場所に、仏足石のレプリカを安置したお堂(モンドップ)がありました。
ガラス板がはめてあったのであまりよく見えませんでしたが、ビルマ文字でしょうか?モン文字なのでしょうか?現代のタイ語ではない文字が書いてあるようでした。
あと、木の扉の彫刻がかっこよかったです。
神鳥ガルーダと天女ですかね。
寺院情報
<寺院情報>
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ワット・ワット・チョンプー・ウェーク
วัดชมภูเวก
Wat Chomphuwek
所在地:54 วัดชมภูเวก ซ.นนทบุรี 33 ต.ท่าทราย อ.เมือง จ.นนทบุรี 11000
54 Soi Nonthaburi 33, Tambon Tha Sai, Mueang Nonthaburi District, Nonthaburi 11000
TEL:02-083-8094
時間:08:00-17:00
URL:https://www.facebook.com/arjanaum.chomphuwektemple/
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以上、世界一美しいメートラニーの壁画を見に行った話でした。
ではまた。