言わずと知れた仏教国タイランド。
町の至る所に寺院が点在し、老若男女問わず参拝に訪れる人々の姿や、朝の托鉢風景を目にすることも少なくありません。
スコータイやアユタヤーといった古都の仏教遺跡は、外国人観光客にも人気のスポットです。
今回訪れたタイ南部のナコーンシータマラートは、実はスコータイやアユタヤーよりも古い歴史を持つ仏教都市。
また、アユタヤ時代に王朝で重用され活躍した日本人、山田長政の終焉の地でもありました。
※Nakon Si Thammarat(นครศรีธรรมราช)のカタカナ表記は「ナコンシータマラート」「ナコンシータムマラート」「ナコーンシータムマラート」など様々ありますが、本記事では「ナコーンシータマラート」で統一します。
ナコーンシータマラートについて
2021年の年末旅行記に入る前に、ナコーンシータマラート県について簡単に紹介したいと思います。(私も付け焼刃の知識なので、あくまでざっくりと)
仏教とは切っても切れない関係にあると言っても過言ではないタイですが、古くから仏教都市として栄えたナコーンシータマラートの存在を知っている外国人観光客はそれほど多くありません。
この辺りは古くから交易の中心地であり、独自の領主を持つ王国として栄え、スリランカ伝来の南伝仏教(上座部仏教)が信仰されてきました。
特に、スリランカからもたらされたという仏舎利(釈迦の遺骨)を安置するワット・プラ・マハータート寺院の仏舎利塔は、昔から人々の厚い信仰を集めてきました。
プラ・マハータート寺院からスコータイやアユタヤーへ僧侶が派遣され、タイ中部地域への仏教伝来に大きな役割を果たしたというのですから、当時から仏教の中心的都市であったことがうかがえます。
ちなみに、この辺りにかつて栄えた国のことをリゴール(Ligor/六昆)と呼ぶのは、タイ語のナコーン(นคร/Nakhon)の英語訛りという説もあるそうです。
「ナコーン」というのは、現在、タイのいろんな都市の名前につきますが、「大きな町」とか「都市」「都」という意味です。
そういえば、南部の近隣県では、ナコーンシータマラートのことを略して「ナコーン」と呼んでいました。
パッタルン県のバスターミナルでも「どこまで?ナコーン?」みたいな。
また、ナコーンシータマラートは、「ナン」と呼ばれる伝統的な影絵芝居も有名です。
牛の皮(=ナン หนัง)から作った影絵人形を使ってスクリーンに投影するので「ナン」と呼ぶのですが、今でもその名残りで「映画」のことを「ナン」と呼ぶのは面白いですね。
ちなみに、「映画」の正式なタイ語は「パーパヨン(ภาพยนตร์)」ですが、日常会話では「ナン」と言うことがほとんどです。
うんちくはこのくらいにして、旅行記へつなぎたいと思います。
空港到着・バイクをレンタル
ナコーンシータマラートへはいくつかの航空会社の国内線が飛んでいますが、今回私が利用したのはエアアジアでした。
2020年以来、コロナ禍によるフライトキャンセルで貯まりまくったエアアジアのクレジット(現金代わりの払い戻しポイントみたいなもの)があるので、それを消費・活用しています。
今回はドンムアン空港ではなく、スワンナプーム発の便。
さすがに国際線はがらんとした雰囲気でしたが、国内線は年末ということもあってわりと活気がありました。
定刻より少し早く離陸したのもあって、ナコーンシータマラートに到着したのも少し早めの17時10分。
沖止めの機体からは徒歩で空港建物へと向かいます。
建物に入ったら、私の荷物が、既に止まったターンテーブルの上にぽつんと放置されていました。(早っ)
こういうところは、地方空港のメリットですよね。
荷物を受け取っているとスマホに電話がかかってきました。
事前に予約していたバイクのレンタルショップのおねえさんからでした。
「空港出て左側で待ってます」とのこと。
店は市内にあるのですが、空港での引き渡しをお願いしていました。(別料金)
今回借りたのは、YAMAHAのQbix。
(ショルダーバッグなどを収納したかったので、シート下のスペースがある程度広めのものを事前に選択)
1日350バーツで4日間。
事前に予約金として300バーツを支払っていました。
費用の詳細は以下の通りです。
ーーーーーーーーーーーー
350B/日×4日=1,400B
空港配車費用=90B(片道)
デポジット=1,000B(バイク返却時に戻ってくる)
ーーーーーーーーーーーー
予約金300バーツ分を差し引いた2,190バーツをその場で支払って、書類にサインをしてキーを受け取りました。
「今ガソリンは4メモリ目あたりなので、返す時もこれくらいにしておいてください!」
と言うと、おねえさんは2台で来ていたもう1台のバイクに2人乗りして颯爽と帰っていきました。
って、満タン貸しやないんかい!(笑)
まあ、こういう緩いところは嫌いじゃありません。
帰りの市内から空港までの交通手段(ミニバス)の下見などをしたあと、バイクで市内に向かいました。
ナコーンシータマラート空港から市内へのアクセス方法については、こちらで紹介していますのでよかったらご覧ください。
イサーン料理のクリスマスディナー
空港の周りは特に何があるわけではなく、とりあえず街の中心部に向かってバイクを運転します。
道路脇に続く椰子の木が、南国に来た気分を盛り上げてくれます。
と同時に、焚き火をしている匂いが漂ってきて、郷愁もそそられました。
ナコーンシータマラート空港から市内までは約15キロほど。
ゆっくり運転して予約してあったホテルに向かいました。
宿に着いたのは、なんだかんだで18時。
iBiz Boutique Hotel
このホテルはリーズナブルな割に清潔で部屋も大きくて良かったです。
周辺にはレストランやマクドナルドなどもあり、便利な立地だと思います。
荷物を置いたら、とりあえずサクッと夕飯を食べに出かけます。
ホテルの前の道を歩いて行くと、日本風タイ鍋の店とか寿司屋とか、ピザ屋とかカフェとかありましたが、なんとなくピンとこなかったので、路地の端にあったイサーン料理屋へ吸い込まれて行きました。
個人的に、イサーンレストランは1人でも入りやすいのです。
席についた頃、日本の友人から「クリスマスイブ、何食べんの?」という、いらない枕詞のついたメッセージが届き、改めて今晩がクリスマスイブなんだと言うことを意識してしまいました。
『クリスマスだから』とか『イブだから』とか、日本みたいに気にしなくてもいいのがタイのいいところなのに、余計なメッセージを送ってくるもんです。(苦笑)
もともとあまりイベントや記念日を気にしない方なんですが、そんなこと言われてしまったもんだから、『クリスマスならチキンかな?』なんて思ったりしてしまったではないですか。イサーン料理屋で。
ガイ・トック・クロック(ไก่ตกครก)
「鉢に落ちた鶏」みたいなネーミングですが、これはソムタムにガイヤーン(焼き鳥)が入っているような一品でした。
ソムタム、ガイヤーンと言えばイサーン料理の鉄板みたいなメニューですが、それを一緒にいただけるなんて、まさに一石二鳥。
椰子の柔らかい芽の部分も入っていおり、シャキシャキした食感が美味しかったです。
鶏でクリスマスっぽさも醸し出せたし。(違う)
ナムトック・ムー(น้ำคกหมู)
これもイサーン料理の定番で、大好きなメニューです。
ビールにも合うんですよねーって思ったら、コロナの関係でアルコールの提供は禁止とのこと。
バンコクだとアルコール提供が解禁となっていたため、すっかり忘れていました。
地方はまだダメなところがけっこうあるのです。
唐辛子とミントが図らずもクリスマスカラーでした。(気にしてる?笑)
カオパット・ルワムミット・タレー(ข้าวผัดรวมมิตรทะเล)
普段、イサーン料理を食べるときはほとんどカオニャオ(もち米)で、普通の白米やカオパット(炒飯)なんかを注文することはほぼないのですが、この日はお酒も飲めないし、なんとなく主食としてシーフード炒飯を注文してみました。
<レストラン情報>
-----------------------------
ソムタム・スワライ
ส้มตำสุวลัย
Somtum Suwalai
所在地:ตำบล คลัง อำเภอเมืองนครศรีธรรมราช นครศรีธรรมราช 80000
Khlang, Mueang Nakhon Si Thammarat District, Nakhon Si Thammarat 80000
TEL:089-725-7033
時間:11:00-21:00
-----------------------------
夕食後はおとなしくホテルに戻って、翌日の予定を練ったりして早めに就寝しました。
ホテルで南部カレーの洗礼
翌朝は、早起きしました。
今日はナコーンシータマラート市内を精力的に回る予定です。
支度を整えて7時からの朝食に一番乗り。
よくあるビュッフェ形式の朝食でしたが、必要十分な種類はあったと思います。
冬瓜と鶏肉のスープとか、イエローカレーなんかをチョイスしてみました。
カレーの具は魚のようです。
一口食べたところ、けっこうガツンときましたね。
南部の料理は辛いと聞いていましたが、ホテルの朝食で出るカレーも容赦なく辛かったです。(笑)
イサーン料理も大概辛いけれど、なんというか、ちょっと違う種類の辛さを感じましたね。ヒリヒリ痛い感じというか。
食べ切りましたけど。
ワット・プラ・マハータート寺院
朝食を終えたら、早速、ナコーンシータマラートの代表的なお寺「プラ・マハータート寺院」に参拝です。
正式名称は、ワット・プラ・マハータート・ウォーラマハーウィハーン(วัดพระมหาธาตุวรมหาวิหาร / Wat Phra Mahathat Woramahawihan)といい、タイで最も格式の高い王室仏教寺院第1級のひとつに指定されています。
通常、お寺は朝一から開いているものだという思い込みで向かったら、8:30からとのこと。(境内の外側には入れます)
外観を撮影したりしたものの、開門にはまだ1時間近く時間があります。
とりあえず、寺院の近くにある昔の地元有力者のお屋敷跡「バーン・タンクン」(บ้านท่านขุนรัฐวุฒิวิจารณ์)を少しだけ見学しました。
Googleマップでは8時からとなっていたのですが、8時になっても入り口が閉まったままだったので、外観だけの鑑賞となりました。
8時すぎにお寺に戻ってみると、こちらは既に開門しているではないですか。
このだいたいな感じがタイランドっぽくていいですね。
プラ・ボロマタート・チェディー(仏舎利塔)
何はともあれ、まずはありがたい仏舎利塔をお参りしましょう。
タイ語では、プラ・ボロマタート・チェディー(พระบรมธาตุเจดีย์)と言います。
311年に建てられたとされています。(実際は13世紀頃という説もあります)
入り口で求めたお供えセット(花、線香、蝋燭、金箔)を持って、大仏塔の前で蝋燭と線香に火を灯して参拝しました。
大きな仏舎利塔の周りには、小さな仏塔がたくさん建ち並んでいます。
これは、チェデー・ラーイ(พระเจดีย์ราย)と呼ばれ、アユタヤ時代末期からラタナコーシン朝(現王朝)初期のスタイルの仏塔だそうで、185基あるとか。
ウィハーン・タップカセート
ウィハーン・タップカセート(วิหารทับเกษตร)仏舎利塔を取り囲む回廊のような仏堂です。
いろんなスタイルの仏像が回廊の中に安置されていました。
ウィハーン・プラ・エート
ウィハーン・プラ・エート(วิหารพระแอด/วิหารพระกัจจายนะ)は、通称「プラ・エート」という仏様を祀る礼拝堂。
身体の悪いところを治してくれるそうで、とあるタイ人グループも熱心にお参りされていました。
私も見よう見まねで参拝しました。
プラ・エートの背中を備え付けの棒で支えると、腰痛や背中の痛みが治るそうです。
ウィハーン・プラ・ソンマー
ウィハーン・プラ・ソンマー(วิหารพระทรงม้า/วิหารพระมหาภิเนษกรณ์)は、私が特に訪れたかった礼拝堂のひとつです。
見どころがけっこう盛りだくさんなのです。
堂内の中央に上に向かう階段があり、その1番上に扉があります。
その扉の左にはブラフマー神、右にはヴィシュヌ神の彫刻が施されています。
(以前は参拝者もこの階段を上れたようですが、私が訪れた時は進入禁止となっていました)
そして、扉の両脇に2体の仏像(神像)が安置されています。
これは左がチャトゥカーム像(ท้าวจตุคาม)、右がラーマテープ像(ท้าวรามเทพ)と呼ばれ、かつてこの地を治めた慈悲深い王の魂を菩薩の姿として象ったものらしいです。
そういえば、もう20年近く前に、タイでこのチャトゥカームのお守りが一世風靡したことがありました。
階段の両脇には、ガルーダやヤック(鬼)などをはじめ、様々な神像や神獣などの像が安置されており、一般的なタイの礼拝堂とは違った雰囲気を醸し出しています。
また、階段の両側面には、釈迦が馬に乗って王宮を去る場面を表した彫刻があります。
これもなかなか見応えがありました。
堂内の釈迦立像
博物館
境内には、寺院の博物館もあります。
入館料はお布施(気持ち)で。
博物館内はほとんどが撮影禁止なので、ここでの詳細紹介は控えますが、仏像をはじめ昔の仏具、経棚、陶磁器、装飾品、日用品など、幅広く展示されていました。
仏足石堂
境内の北側の小高い丘のような場所に、仏足石のレプリカを安置したお堂(มณฑปพระพุทธบาทจำลอง)がありました。
他にも、まだまだ紹介していないお堂や礼拝堂などはたくさんあります。
さすが南部の仏教の中心的存在であり続けているお寺ですね。
見どころがたくさんで、隅々まで拝観しようとするとかなり時間がかかります。
ナコンシータマラート県へお出かけの際は、ぜひ拝観なさってください。
<寺院情報>
-----------------------------
ワット・プラ・マハータート寺院
(ワット・プラ・マハータート・ウォーラマハーウィハーン)
วัดพระมหาธาตุวรมหาวิหาร
Wat Phra Mahathat Woramahawihan
所在地:435 ถ. ราชดำเนิน ตำบล ในเมือง อำเภอเมืองนครศรีธรรมราช นครศรีธรรมราช 80000
435 Ratchadamnoen Rd, Tambon Nai Mueang, Mueang Nakhon Si Thammarat District, Nakhon Si Thammarat 80000
TEL:075-343-411
時間:08:30-16:30
-----------------------------
この後もナコーンシータマラート市内観光は続くのですが、続きは次回にしたいと思います。
ではまた。
(参考)