毎年6月か7月頃に行われる仮面祭り「ピーターコーン」(ผีตาโขน)は、タイの奇祭として有名です。
カラフルで奇抜なお面と衣装をまとった精霊たちのパレードが、このお祭りのハイライト。
沿道には屋台が立ち並び、前夜祭や仏教儀式など、興味深い行事が盛りだくさんです。
普段は静かな田舎町が、年に1度のお祭りが開催される3日間は熱気に包まれます。
2022年は7月1日(金)~3日(日)の週末開催ということもあり、絶好のチャンス!
これは参加せずにはいられまい!ということで行ってきました。
(1ヵ月遅れのレポートですが。笑)
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ピーターコーンについて
ピーターコーン(ผีตาโขน)は、イサーン地方のルーイ県ダーンサーイ郡で行われる精霊のお祭りです。
このお祭りは、お釈迦様の前世であるヴェッサンタラ王子が山から都へ戻る際に、別れを惜しんだ森の獣や精霊たちが後について行ったという仏教説話(本生譚)に基づいています。
元々は、
“ผี ตาม คน”「ピー・ターム・コン」
と呼ばれていたそうです。
ผี =精霊
ตาม =ついて行く
คน =人
⇒「精霊が人について行く」ですね。
それが、いつの間にか変化して
“ผี ตา โขน”「ピー・ター・コーン」
と呼ばれるようになったのだとか。
祭りの日程は、毎年、この土地の霊媒師によって決められます。
よって、開催日はその年にならないとわからず、週末に重なるとも限りませんん。
通常、6月か7月になることが多いです。
と、ピーターコーン(ピーターコンとも)に関するうんちくを述べたところで、この後は私が訪問した時系列に沿って写真と共に雰囲気を紹介していきたいと思います。
初日
ピーターコーン祭り(ブンプラウェート祭/ブンバーンファイ祭)は、3日間行われます。
初日である7月1日(金)は、仕事があったので参加できず。
初日の行事
私は参加できなかったのですが、初日にどういう儀式があるのかだけ簡単に説明しておきます。
早朝、司祭と村民一行ががマン川へ行き、司祭の1人が川のなかの石を3回つかみます。
これは阿羅漢のひとりである「プラ・ウッパクット」を石に見立て、祭り開催期間中の安全と守護を祈願しお招きする儀式です。
プラ・ウッパクット(に見立てた石)は、ワット・ポーンチャイ寺院のお堂に安置されます。
一方、祈祷師の家では精霊を呼ぶ儀式が行われ、家からワット・ポーンチャイ寺院まで小規模なピーターコーンの行列が催されます。
とまあ、初日の早朝から昼くらいまではほとんど地元の人々の儀式がメインな感じですが、夕方以降はダーンサーイのメインストリートに設けられた特設ステージ前では前夜祭的な催し物が開催され、ピーターコーンの仮面をつけた人々や観光客が歌い踊りながらミニコンサートやミニコンテストなんかを楽しむ姿が見られます。
夜ごはん
かくいう私たちは、夕方仕事上がりにバンコクから車で出発。
その夜は、中間地点であるロッブリー県のホテルで仮眠をとって、翌日の朝にお祭り会場に行く作戦です。
まずは、ナワナコン工業団地の近くにあるステーキ屋さんに寄って腹ごしらえ。
タイ人向けの格安ステーキ屋さんですが、清潔な雰囲気でそこそこ美味しかったです。
仕事帰りのワーカーさんカップルで賑わっていました。




夕飯を食べ終わったら、ワンノーイからサラブリー、ロッブリー方面へと車を走らせました。
ホテルで仮眠
夜11時半。
仮眠用に予約しておいたホテル「バーン・プラーワーン・リゾート」に到着。


最近できたばかりなのか新しくてきれいな部屋でした。
コスパはいいです。
ただ、幹線道路を走る車の音がかなり部屋の中まで聞こえたので、我々は疲れていて爆睡しましたが、神経質な方にはおすすめしません。
ピーターコーン2日目
7月2日(土)ピーターコーンの2日目は、ピーターコーンのハイライトでもある大規模なパレードが行われる日で、観光客にとっては一番盛り上がるイベントの日とも言えます。
朝
朝、5時。
道路脇のホテルで4時間ほどぐっすり眠った私たちは、まだ暗いうちにチェックアウトしてルーイ県ダーンサーイ郡へと向かいます。
夜が明けてあたりが明るくなってきました。
国道21号線沿いにはやたらとラオスのルアンプラバーン(ルアンパバーン)までの標識が建てられています。
『いや、それ必要?』って思いますが、ああいうのを見ると、旅情を掻き立てるというか、ワクワクするのも確かです。
ペッチャブーン県からルーイ県に入り、いよいよこの山を越えればダーンサーイです。
地元の高校生でしょうか、ピーターコーンの衣装を着て会場へ向かっています。(あの峠道を3人乗りってすごい…)
ピーターコーン祭り会場へ
9時過ぎ。
お祭りが行われるダーンサーイのメインストリートにほど近いホテルに車を停めたら(チェックインは午後)、早速歩いて会場まで向かいました。
(このホテルは会場まで徒歩3分という素晴らしい立地なんですが、あまり良い印象がなかったのでブログで紹介するのはやめておきます。ネガティブなこと書いてもアレですし)
会場となるメインストリートに近づくと既にお祭りの雰囲気満載。
嬉しくなってきますよね。
ここがメインストリートの入り口です。
入場者は検温とアルコール消毒で新型コロナ対策。
通りの両サイドには屋台も立ち並んでいます。
そしてあちこちにピーターコーンの仮面を被った人たちが。
みなさん思い思いに記念撮影をしています。
儀式の中心となるワット・ポーンチャイも日本の縁日のような賑わいです。
このお坊さんたちは観光でしょうか。
医療目的の大麻の栽培や使用が解禁になったタイ。沿道で普通に大麻の苗が売られていました。
入口から1キロほど行ったところに特設ステージがありました。
ここでコンサートやコンテスト、パレードの開会式などさまざまなイベントが行われます。
会場の先にはパレードの出番を待つピーターコーンの行列がスタンバイしていました。
色鮮やかで奇抜な精霊たちでいっぱい。
音楽を鳴らして楽しそうに踊る人たち。
仮面は基本的にもち米を蒸すザルをアレンジして作られています。
この人たちが扮しているのが、パレードの主役であるヴェッサンタラ王子(タイ語ではプラウェートサンドーン:พระเวสสันดร)とその家族。
毎年どうやって選ばれているんでしょうかね。
このヴェッサンタラ王子一行を見送る様々な精霊たちが後に続きます。
泥人間とか。
愛嬌のある精霊とか。
怪しい呪術師(呪詛師?)のような人とか。
爽やかさをこれでもかと振りまくお兄さんとか(笑)
地域の婦人会のような方々の行列も、踊りながらゆっくり進んでいきます。
山車の上に付いていた小さなピーターコーン人形がとてもキュートでした。
新型コロナで自粛を余儀なくされていた2年を経て、今年はより盛り上がっていたような気がします。
メイン通りから少し脇に入ったところにある店で簡単にランチをとりました。
ピーターコーンの人形やキーホルダーなどのお土産を物色したり。
パレードの終点でもあるワット・ポーンチャイに立ち寄ってみたり。
夜の雰囲気
一通りパレードを堪能したら、一旦ホテルに戻ってチェックインをし、シャワーを浴びて一休み。
夕方、再びお祭り会場へと向かいました。
まずは、メイン通りに入ってわりとすぐの場所にあったレストラン「クルア・クンナーイ」(ครัวคุณนาย)で夕飯を食べることにしました。
ゲストハウスも兼ねているのでしょうか、なかなかいい雰囲気の食堂でした。
牛肉の炒め物やレモングラスのヤムも美味しかったですが、特に季節のおすすめである竹の子炒めが柔らかくて気に入りました。


夜のお寺へ。
境内の一角にあるピーターコーン博物館に入ってみました。
ピーターコーンの歴史や儀式についての説明なんかも展示されていました。


夜は夜でまた違った雰囲気があってよかったです。
メイン会場まで向かうと、コンサートが行われており、すごい盛り上がりでした。
あまりにもすごい人混みだったので、会場脇で少し雰囲気を味わって退散。
それならばと、マン川沿いに設置されたビアガーデンへ行ってみましたが、ここも満席だったので、おとなしく部屋に戻ることに。
ピーターコーン3日目
7月3日(日)は、ピーターコーン祭りの3日目。
この日は、早朝からワット・ポーンチャイ寺院で説法が行われ、村人たちが集まります。
祭りの無事を祈ってお迎えしたプラウッパクットに感謝し、再びマン川へお返しするという仏教行事が行われます。
したがって、3日目は沿道の屋台もまだいくつかは残っているものの、大規模なピーターコーンのパレードなどは行われないため、すでに祭りの後のような静けさと寂しさが漂っています。
境内では青年僧たちが掃除をしていました。
この2日で溜まった大量のゴミをピックアップトラックに乗せて運んでいました。
郡役所近くの食堂で朝ごはんを食べました。


ゆっくり食事を済ませたら、そろそろダーンサーイを後にしたいと思います。
今回、2回目のピーターコーン祭り参加となりましたが、普段は静かな田舎町が年に1度の盛り上がりを見せる、その熱気には毎回圧倒されます。
村全体がお祭りムード一色になり、観光客も一緒になって踊ったりパレードに参加したりできるのもすごく楽しかったです。
ピーターコーン会場付近の駐車場事情とホテル情報
ここで、ピーターコーン祭りへ車で行かれる方向けに駐車場の情報を少し。
普段はほとんど何もない小さな田舎町が、年に1度だけまさにお祭り騒ぎになるとあって、会場付近のホテルや宿泊施設はすぐに満室となってしまいます。
今回、私たちは運よく徒歩数分という立地のホテルの1室に泊まることができましたが、お祭り開催期間中は非常にいい値段の宿泊料金でした。(年に1度ですもんね、気持ちはわからなくはありません)
会場へ徒歩で行き来できるのは、とても便利なのは確かです。
ただ、実際に滞在してみて思ったのは、わざわざ高い(わりに設備の伴わない)ホテルに宿泊しなくても、車で行くなら多少離れた場所にある快適なリゾートホテルなんかに泊まってもいいのではないかということでした。
ピーターコーンの会場付近には、特設の駐車場もありましたし、周辺の民家や商店の空きスペースでは車の一時預かりのサービスがあったりもしました。
(実際、私たちが泊まったホテルの駐車場でも、時間で駐車場を貸していましたから)
というのが、実際に会場近くに宿泊してみた私の率直な感想です。
もちろん、『お祭りでは酔っぱらってはじけたい!』という人は、徒歩圏内の宿を早めに押さえるようにしてくださいね。
プラタート・シー・ソーンラック
ダーンサーイを離れる前に、この土地とは切っても切れない重要な場所へ立ち寄りました。
マン川沿いの小高い丘に建つプラタート・シー・ソーンラック(พระธาตุศรีสองรัก)という仏塔です。
この仏塔は、アユタヤー王朝のチャクラパット王とヴィエンチャン王朝(現ラオス)のセーターティラート王が、侵略を繰り返すビルマに対抗するために不可侵条約を結び、その友好の証として両国により共同で建てられたもので、1563年に完成しました。
こちらは、裏側の入口です。
階段のところで靴を脱がなければなりません。
仏塔の周りを回りながらお参りします。
仏塔に供えられている黄色の飾りはトンプン(ค้นผึ้ง)と呼ばれる蜜蝋の花です。
石碑には仏塔が建てられた経緯が記されています。


プラタート・シー・ソーンラックは、ルーイ県の県章にも使われているほど、この地域の人々にとって重要な存在です。
おわりに
以上で、2022年のピーターコーン祭りのレポートは終わりです。
この後、ペッチャブーン県の山にある映え寺院「ワット・プラタートパーソーンケーオ」(วัดพระธาตุผาซ่อนแก)へ向かうのですが、その話は後日あらためて。
ではまた。