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バンコク生活の中で気づいたことや感じたことを書き連ねます。タイの生活情報やタイ語のあれこれ、タイ国内旅行、近隣諸国訪問なども織り交ぜながら。

プレー県の小さな里でタイの円空仏に出会った!【タイ北部ナーン県&プレー県 6】

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隣のローン郡まで遠出をしてみたプレー県2日目。
午前中は、とてもかわいいメルヘンな駅と、イケメンならぬイケ麺を堪能しました。

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午後は、ワット・シードーンカム寺院にある「爆弾の釣鐘」と、非常にユニークで独創的な造形の木彫仏たちを見学です。

 

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爆弾パレードの町?

プレー県には、
"แพร่แห่ระเบิด" (プレー・ヘー・ラブーッ)
という言葉があります。

直訳・棒訳すると、「プレーは爆弾行列をする」「プレーの爆弾行進」というような意味なんですが、
これは、一般的に、プレー県の人たちを揶揄するような意味合いで捉えられている節(フシ)があります。

どういうことかと言うと、次のような話が元になっているようです。

先の第2次世界大戦時に、プレー県は連合国軍による爆撃対象地となったのです。
日本軍(及びタイ国軍)のビルマ侵攻を阻止するために、この辺りにも爆弾が投下されたそうです。

中には爆発せずに落ちて来た不発弾もいくつかあったのですが、プレーの村の人々は、その不発弾を『天から降って来たありがたいもの』だと祀り上げて行進したというのです。
その際に、不発弾が爆発して町中の人が死んでしまった、という笑い話です。(って、笑えない)

この手の話は、なんとなくプレーの人々のことを見下し、馬鹿にしたようなニュアンスを含んでいますよね。

しかしこの話、事実とは少し違うようです

連合国軍によって投下された不発弾が見つかったことは確かですが、村人がそれを「天からの贈り物」だと考えたわけではありません。
いや、考えた人も中にはいるかも知れませんが、不発弾を神輿のように担いで行進したために爆発したという事実はないようです。

信管及び火薬除去処理済みの外殻(弾殻)が良い音を響かせることから、爆弾の残骸を発見した村人の中に『お寺の鐘として寄進しよう』と考えた人がおり、奉納するために村から寺院へ移動する道中に見物人も含めて行列ができた、というのが事実に近い話のようです。
(このローン郡でお寺に寄進された爆弾釣鐘は3つあり、その内の1つは、実際にロイクラトンのパレードに混じって行進したそうです)



爆弾釣鐘(ワット・シードーンカム)

ローン郡で寺院に寄進された3つの不発弾の鐘のうちの1つを見学しに、ワット・シードーンカム(วัดศรีดอนคำ)寺院を訪れました。

ワット・シードーンカムは、ローン郡の下町にある古刹です。
地元の方の間では、通称「ワット・フアイオー」(วัดห้วยอ้อ)と呼ばれています。

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境内の一角に爆弾の外殻から作られた釣鐘が展示されていました。
この爆弾釣鐘が、ロイクラトン祭り(北部では『イーペン祭り』と呼ばれる年中行事)のパレードに混じって、牛車の上で鐘を打ち鳴らしながらお寺へ行進したものだそうです。

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私も、試しに鐘を打たせてもらいましたが、確かに良い音が鳴りました。
これは、家で眠らせておくよりお寺に奉納した方がいいなと考えた当時の人の気持ちもわかります。




タイの円空仏!?「プラチャオ・プラートー」

日本各地には、円空仏と呼ばれる木彫りの仏像があります。
特に、愛知県や岐阜県の飛騨地方は、たくさんの円空仏が現存していることで有名です。
円空仏についての詳細はネット上でもたくさん情報があるので割愛しますが、ざっくり言うと、江戸時代の僧侶円空が全国を行脚しながら製作した一刀彫りの仏像たちのことです。
荒削りな中にも繊細な表情をたたえた独特の作風が特徴です。

ja.m.wikipedia.org



そんな円空仏を彷彿とさせる仏像が、タイのプレー県ローン郡の小さな町、フアイオー地区にあったのです。

その姿を見た時、私は思わず「タイの円空仏!」と、勝手に命名してしまいました。
(私まなおの個人的感想ですので、苦情はご勘弁くださいね)

ワット・シードンカム境内の一角にある博物館に、その独特な仏様は安置されています。

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プラチャオ・プラートー(พระเจ้าพร้าโต้)は、タイヤイ族(シャン族)のギヤオ様式美術(ศิลปะเงี้ยว)の木彫仏で、プラートーという鉈(なた)で造られたことが、その名前の由来です。

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大きく広い耳、ドリアンのような螺髪(罰当たり!?)、ミステリアスな笑み・・・
その独特な造形や表情は、一般的なタイの仏像のイメージとは異なり目を惹きます。
ユニークでなんとも言えない魅力があるんです。
見入っちゃいました。

※罰当たりついでに、耳を見てブラックデビルを思い浮かべたのも白状しておきます。
(歳バレ・・・クワックワッ)


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また、伝承では、この地方の職人が、日が昇ってから日が沈むまでのたった1日でこの仏像を創り上げたと言われています。
(すごい情熱と技術力!)


チークの巨木(白檀という記述もあり)1本から彫り上げられているそうです。
1693年のワット・シードーンカム創建と同時に、中央に鎮座するこの高さ3メートルの仏像1体と小さな仏像4体の合計5体が造られたと考えられています。

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現在、当博物館に残っているのは、3体のみ。(上の画像、両端の2体はパネル)
1体はシーナカリン王太后(ラーマ9世の母君)に献上された後、チェンライ県のメーファールアン芸術文化公園に安置されており、もう1体は盗難に遭い行方がわかりません。

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プラチャオ・プラートー仏以外にも、博物館の中には無数の仏像が展示されており、千体木仏(พระเจ้าไม้ปั๋นต๋น = พระเจ้าไม้พันองค์)と呼ばれています。

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この小さな木彫りの仏像もユニークな造形のものが多く、これらも含めてタイの円空仏みたいだと思った次第です。

時代的にも近いんですよね。


仏像に興味がある方もない方もおられるかと思いますが、普段目にする仏像とはひと味もふた味も違った仏様に出会えるので、プレー県ローン郡方面を訪れる際は、ぜひワット・シードーンカムの博物館(無料)に立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
お勧めです。


爆弾釣鐘とタイの円空仏!?



<寺院情報>
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ワット・プラタート・シードーンカム
(GoogleMapではなぜか『ワット・シートーンカム』と表記)
วัดพระธาตุศรีดอนคำ
Wat Phra That Sri Don Kham
所在地:43 ทางหลวงชนบท แพร่ 3030 ตำบล ห้วยอ้อ อำเภอลอง แพร่ 54150
    43 Rural Road Phrae 3030, Huai O, Long District, Phrae 54150
TEL:054-581-278
駐車場:あり(無料)
参拝・博物館:無料
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とうとう雨が・・・

13時すぎ。
ワット・シードーンカムのプラチャオ・プラートー博物館から出てきたら、パラパラと雨が降り始めました。
覚悟はしていたものの、熱帯低気圧に変わった台風11号の残党が、いよいよ迫って来たもよう。

テキスタイルの博物館や藍染のお土産屋さん、山の上のお寺(プラタート・ドーイ・ノーイ)など、ローン郡では他にもいろいろ見たいところがありましたが、こればかりは仕方ありません。
山越えもあるので、早めに切り上げてプレーの町へ帰ることにします。

セブンイレブンで買ったレインコートを2種類かぶって完全防備です。(笑)
山道に入ったところで雨足が強くなりましたが、無理をせず安全運転を心がけて進みました。

14時前には無事プレー市内に到着。
ホテルの部屋で温かいシャワーを浴び、写真の整理や情報収集などをしつつ、しばらく休憩です。

今晩は何を食べようかな・・・。



ではまた。