バンコクからタイ湾沿いに300キロほど南下したプラチュアップキリカンという町にある絶景スポット「カオロームムアック」の山登りを終えて山を下りて来た私たち。
軍の敷地内にあるレストランでシーフードランチを食べた後、プラチュアップの町を散策しに出かけました。
77年前にこの土地で起こった日本軍とタイ軍との衝突など、知らなかった歴史にも少しだけ触れることができました。
そして、一日の締めくくりは、素敵な日本食レストランでした。
空軍基地内のホテルでシーフードランチ
私たちがカオロームムアックの登山を終えてちょうど登山道入口まで降りてきた時、ぽつぽつと雨が降り出しました。
そして、その3分後には滝のようなスコールに。
受付テントの下で少し雨宿りをしていましたが、しばらくやむ気配もなく、近くに停めてあった車に戻って移動することにしました。
気の毒なのは、まだ山の中にいたたくさんの人たちです。それでなくても滑って大変だった下山道はこの雨で修羅場となっていたに違いありません。
大雨の中、第5航空団(กองบิน 5)基地内を運転していると、タイ空軍が経営するホテル「ファーチョムクルン(ฟ้าชมคลื่น / Fa Chom Kluen)」の前に差しかかり、レストランが見えたので、雨宿りも兼ねてここでランチをとることにしました。
レストランに入っていくと、従業員はテーブルに突っ伏して寝ているし、私たち以外に誰も客がいなくて戸惑いましたが、そのうちに何組か入ってきて知らないうちに賑やかになっていきました。
適当にシーフード料理を注文してきます。
価格的にはそれほど高くもなく安くもなく、地方のリゾートにありがちな設定だと思います。
揚げエビのタマリンドソース(กุ้งซอสมะขาม / 200バーツ)は甘めで好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私はけっこう好みでした。辛い料理の箸休めにもなるし。
あと、蛤のナムプリックパオ炒め(หอยตลับผัดน้ำพริกเผา / 120バーツ)も美味しかったですね。
イカ焼き(หมึกย่าง / 200バーツ)やエビ入りソムタム(ส้มตำกุ้ง / 140バーツ)、シーフードチャーハン(ข้าวผัดทะเล / 50バーツ)なんかは、まあ普通でした。
動物ふれあいコーナー
ランチを食べている間に雨がやんだので、近くを散策してみました。
ニワトリや七面鳥、ヤギや鹿、なぜかダチョウが飼育されている織があり、餌をやったりして動物とふれあえる一角があったり。
乗馬コーナーがあったり。
小さな馬場と、見る限り一頭だけ馬が待機していましたが、雨上がりとあって誰もおらず閑散としていました。
ちなみに、馬場内を15分間ひき馬で乗せてもらうのが120バーツ、馬に乗って写真撮影のみが50バーツ、1時間の乗馬レッスンが500バーツとのことでした。
第5航空団歴史公園
続いて、第5航空団の歴史公園(อุทยานประวัติศาสตร์กองบิน ๕)のほうへ向かいました。
ここは、美しいビーチが広がるマナオ湾とプラチュアップキリカン湾に挟まれた穏やかな場所ですが、今からちょうど77年前にここで日本軍とタイ軍及びタイ警察との衝突が起こり、双方に多くの犠牲が出た場所でもあるのです。
1941年12月8日、ビルマを攻略するためにタイを通過・進駐する必要があった日本軍は、タイの各地に上陸します。その一つがタイ王国空軍基地があったここプラチュアップキリカン湾及びマナオ湾付近でした。
当時日本軍はタイ政府に対して平和進駐を打診しており、タイ政府からも各地に停戦命令が出されていたのですが、このプラチュアップキリカン航空部隊は通信機故障によりその通達が届かなかったそうです。よって日本軍とタイ軍との間に衝突が起こり戦闘となったという悲しい歴史があります。
プラチュアップキリカンでは両軍の戦闘が続き、多くの犠牲者を出しました。通達が届いて停戦となったのは翌日の昼ごろだといいます。
私たちがカオロームムアック登山を終えてこの歴史公園にいたのが、ちょうど2018年12月9日の昼過ぎ。まさに77年前のこの時間にこの場所で起こった惨事を思うと、何とも言えない複雑な気持ちになりました。
軍の歴史公園内にある追悼モニュメントや記念碑にはリボンや花が飾られ、式典及びイベントが開催されるようでした。
公園の一角では、タイ軍と日本軍の衝突の再現劇のリハーサルが行われていました。おそらくその日の夕方から夜にかけての記念イベントで上演されるのだと思います。
猿山のお寺へ(カオチョンクラチョック)
空軍第5航空団を後にした私たちは海岸沿いの道を北上しました。
弧を描くプラチュアップキリカン湾の真ん中あたりにある小高い山「カオチョンクラチョック(เขาช่องกระจก)」の山頂に見えたお寺に行ってみようと思ったからです。
途中、赤く伸びる桟橋に立ち寄ってみました。
天気のいい日には青空と海によく映えてきれいなんだろうなと思います。地元の人や観光客が写真を撮り合ったり、のんびり釣りをしている人なんかが見えました。
お寺の駐車場に車を停めて、396段の階段を上ります。今日はどれだけ階段を上れば気が済むんでしょうかね。(笑)
このカオチョンクラチョック山には、多くの猿が生息しているのですが、ここの猿はカオロームムアックにいたシロマブタザルとは違い、わりと図太く、時には攻撃的だったりもします。
我々が階段を上ろうとしても階段に寝そべったまま避けようともせず。
参道周辺を我が物顔で占領していたりします。
特に食べ物や飲み物をちらつかせない限り襲ってくることはありませんが、ひとつ注意が必要です。
それは、決して猿とじっと目を合わせてはいけないということです。
これは、このあたりで猿の餌を売っているおばさんから聞いたことで、私も実際に体験したことなので本当です。
毛づくろいをしている大人しそうな一匹の猿がいたので見ていたら、こちらに気付いたみたいで、きょとんとした顔で最初は見つめ返してきました。
可愛らしかったので私はそのままそいつの顔をじっと見つめていたのですが、突然、歯をむき出しにして威嚇してきたのです。
目をじっと合わすことは喧嘩を売っているのと同じなんですね。(田舎のヤンキーかいな。笑)
このお寺は「ワット・タムミカ―ラーム・ウォーラウィハーン(วัดธรรมิการามวรวิหาร)」といい、もともと本堂は山の麓にあり、山頂には仏塔と仏足蹟のレプリカがあります。
頂上の仏塔付近にも猿がそこらへんにいます。もはや自分たちの家くらいに思っているのでしょう。
頂上からはプラチュアップキリカン湾や今朝登ったカオロームムアック山などの眺望がとてもきれいです。プラチュアップの街並みも見渡せます。
町の守護神(ラックムアン)
プラチュアップキリカン郡の守護神として祀られているラックムアン(หลักเมือง:町の中心に建てられた柱)の祠はなぜかとても豪華でした。
クメール様式の堂々とした祠で、一地方都市のラックムアンとは思えないくらいの立派なものでした。
日本食レストラン「富士山」へ
ビーチ沿いにあるホテルにチェックインをして、シャワーを浴びてほっこりしたら、猛烈な睡魔に襲われかけたのですが、このまま寝てしまうと「本日終了」は間違いないので、気合を入れて早めの夕飯を食べに行くことにしました。
今回、プラチュアップに来るに当たり、どうしても行ってみたかったレストランがありました。
それが日本食レストランの「富士山(FUJISAN)」です。
この日本食レストラン、タイの地方都市にありがちな、タイ人経営の「なんちゃって日本料理屋」ではなく、正真正銘の日本人が経営するまっとうな日本料理レストランなんです。
それもそのはず、実はこの「富士山」のオーナーはもともとバンコクの「竹亭」を経営されていた方なんです。
竹亭と言えば、バンコク在住の方なら一度は名前を聞かれたことがあると思う老舗の日本レストランでした。
私もタイに来たばかりの頃、カオサンにあったお店で一度食事をしたことがあります。もう十数年前のことです。
当時はタイの地方都市に住んでいたこともあり、なかなか日本食を食べる機会がなく、バンコクに出てきた時に久しぶりに食べた日本食に涙が出そうになったことを今でも覚えています。
その後、シーロムにお店を構えられてからも何度かランチや夕飯を食べた記憶があります。
今回、プラチュアップキリカンでの山登りをするにあたり、事前に町情報を調べている中で、たまたまこの「富士山」の記事をネット上で見つけました。
と同時に、失礼ながら、「竹亭」が去年閉店したのもその記事ではじめて知りました。
タイ人客が今どきのオシャレな日本食レストランへシフトしたことや不景気の影響があったようで、断腸の思いで閉店を決断されたそうです。
それでも、その後ご家族の支えもあって、奥様の故郷であるこの穏やかな海辺の町での再挑戦を決意されたとのこと。
地方の港町であることの利点を生かして創意工夫をしながら日々奮闘なさっている模様。
これはぜひ行って食べてみたいと思ったわけです。
ホテルからぷらぷら歩いて数分。
最初、フェイスブックからとんだ地図の場所に向かいましたが、どうやら位置が間違っているらしく、近くの商店にいたタイ人の方に「日本食レストランはどこですか?」と尋ねると親切に教えてくれました。町のみなさんよくご存じなんですね。
お店は、町の目抜き通りのひとつ、サラチープ通り(ถนนสละชีพ)のTMB銀行の向かい側にありました。
赤い看板に赤い提灯が掲げてあってわかりやすいですね。
お店の中に入ると、日本人の店主、いらっしゃいました。
店内はタイ人の家族連れの方々が数組と、仕事仲間らしきグループの方もいて、ほぼ満席に近かったです。
人気なんですね。明るくて活気のあるお店でした。
その日、入ったばかりの新鮮なマグロの一種(ปลาโอ)とシャムイトヨリ(ปลาทรายแดง)があるとのことで、まずはマグロの刺身とシャムイトヨリの照り焼きを注文しました。
ビールを注文した後メニューを見て驚いたんですが、どれも本当に安いんです。
一品60バーツくらいから100バーツ台のメニューがほとんどです。
店主に伺うと、やはり田舎町だから価格は安めに設定しないとお客さんが来てくれないというのもあるらしいんですが、そもそも地方だからバンコクに比べて人件費も安いし、材料費も安い(一部日本食用専門素材を除いて)ので、コストを抑えられるのだそうです。
にしても、定食類だって100バーツ台だし、カツ丼なんて99バーツですよ。
お腹が空いていたのもあって、おすすめの炙りしめ鯖をはじめ、いろいろ注文しましたが、どれも美味しかったです。
見た目の豪華さや奇抜さなんかはありませんが、なんていうか一生懸命作ってくれた素朴な美味しさっていうか、日本の商店街の一角にある定食屋さんで食べてるような美味しさっていうか。
ビールを飲んで何種類かのあてとおかずをそこそこ頼み、最後はデザートのアイスクリーム(抹茶アイスと小倉アイスは自家製だそうです)まで食べて、満腹になったにもかかわらず「え、こんなに安いの?」というお会計で正直驚きました。
その日は2時起きからの山登り&観光で疲れていたのと、翌日も朝早い予定だったのとで、まだ宵のうちにお店を後にしたのですが、今度はゆっくり日本酒でも飲みたいと思いました。
素朴な町の雰囲気も相まって、居心地のいい空間で楽しい時間を過ごせてよかったです。
もし近所だったら週に何回かは通いたいと思う素敵なお店でした。
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富士山
Fujisan Japanese Restaurant119/6 Sala Cheep Road
Amphoe Muang Prachuap Khim Khan, Prachuap Khiri Khan, Thailand119/6 ถนน สละชีพ อำเภอเมืองประจวบคีรีขันธ์ ประจวบคีรีขันธ์ 77000
TEL:081 850 1940営業時間: 10:00〜14:00, 17:00〜21:00(月曜日定休)
Facebook:https://www.facebook.com/Thailandfujisan/
店主さんのブログ:タイの海辺で54才の再挑戦----------------------------------------------
まとめ
プラチュアップキリカン県と言えば、ホアヒン(フアヒン)ばかりが注目されがちですが、県自体は南北に長く、他にもたくさんの見所が点在しています。
今回はカオロームムアックの山登りがメインだったので、プラチュアップキリカンの町には短い滞在でしたが、県庁所在地とは思えないくらい素朴で穏やかな印象を受けました。
古い町並みが残っていたりきれいな海辺の景色が広がっていたり。
のんびり町歩きするのが楽しそうな、いい町でした。
美味しいレストランもあるし、快晴のカオロームムアックにも再チャレンジしたいから、次回はゆっくりとこの町を楽しみたいです。
ではまた。