今回は、アユタヤの遺跡が集中する歴史公園の城壁の外、東側にあるおすすめ遺跡寺院を紹介します。
ワット・マヘーヨン(วัดมเหยงคณ์)
最初に紹介するのは、ワット・マヘーヨン(วัดมเหยงคณ์)という、外国人観光客の中ではマイナーながらも、かつてはアユタヤの王室寺院のひとつであった、わりと規模の大きな寺院です。
マヘーヨンというのは、スリランカの重要な仏跡の名前マヒヤン(マヒヤンガナ)が由来で、山・丘陵を意味するそうです。
アユタヤ初期の1438年に、ボーロマラーチャーティラート2世(サームプラヤー王)が建てた寺院と言われています。
1767年の第2次アユタヤ陥落と共に破壊され、1984年に新たな僧院として復活するまでは廃寺となっていました。
現在は、遺跡部分の隣に新しい寺院が建設され、瞑想道場として一般の方々にも門戸が開かれています。
その新しく建てられた現役寺院部分には、2020年にも訪れていますが、瞑想を主眼としているためか、人工の洞窟のようなものがいくつも作られていたり、人工池の周りにもハリボテ感のある瞑想コーナーがあったりと、どことなくテーマパークっぽい造りだなと思ったりしました。(すみません)
今回は、遺跡部分に焦点をあてて紹介したいと思います。
(写真は2020年のものも一部混ざっています)
東側正面入り口から続く参道のような通路の先に本堂(布薩堂)があります。
この遺跡の本堂がかなり大きくて、幅17メートル奥行き35.2メートルもあります。
2段の基壇の上に建てられており、船腹形に湾曲した基壇のスタイルはアユタヤ後期に好まれた建築スタイルですが、これはアユタヤ王朝第33代のサンペット9世(ターイサ王)が18世紀初頭に大規模な修復を行なったからです。
本堂の正面東側には3つの扉があり、中央は元首(王)のための入口でした。
ちなみに、西側には2つの扉があります。
かつては砂岩製の仏像が本尊として安置されていましたが、現在は崩壊しています。
本堂の裏手、西側の壁の外側に大きな仏塔があります。
先端部分は崩落しています。
基壇部分はもともと80頭もの象が取り囲んでいました。
現在も、そのうちの何頭かの姿を目にすることができます。
この仏塔は、スコータイのチャーンローム寺院の仏塔と同じく、釣鐘型のスリランカ様式の仏塔です。
スコータイ建築の影響を受けていることがわかります。
鼻や耳のもげた象の姿や崩落して転がったままの尖頭などが、かつての栄華と儚さを今に伝えています。
そんな遺跡然としているこの寺院跡が私は好きです。
仏塔の周りを歩いていたら、野原の先に象が観光客を乗せて歩いているのが見えました。
<寺院情報>
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ワット・マヘーヨン
วัดมเหยงคณ์
Wat Mahe Yong
所在地:95 หมู่ที่ 2 อำเภอ พระนครศรีอยุธยา จังหวัดพระนครศรีอยุธยา 13000
95 Moo 2 Phra Nakhon Si Ayutthaya District, Phra Nakhon Si Ayutthaya 13000
時間:08:00-17:00
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ワット・チャーン(วัดช้าง)
先ほど、ワット・マヘーヨン遺跡から見えた象乗り散歩の姿。
その場所にあるもうひとつの遺跡が、ワット・チャーン寺院(วัดช้าง)、直訳すれば「象の寺」。
すでに廃寺となっている遺跡です。
建立の経緯・詳細は不明ながら、このワット・チャーンの仏塔(主塔)は、もともと上で紹介したワット・マヘーヨンの仏塔と同じように象が取り囲むスコータイ様式の仏塔であったと考えられています。
(いずれもアユタヤ時代初期に建立と推測)
主塔の規模からみてもワット・マヘーヨンと同じくらい重要な寺院であったことが推測され、マヘーヨン寺院と同じく王の命で建てられたものだと考えらています。
ボーロマラーチャーティラート2世(サームプラヤー王)の時代に、王位を争って相打ちとなり死亡した2人の兄を弔うために建立したのではないかという説もあるそうです。
この遺跡を訪れたのは夕刻だったのですが、一部崩壊した仏像と仏塔が暮れなずむ空に浮かんで、なんとも言えない哀愁が漂っていました。
<寺院情報>
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ワット・チャーン
วัดช้าง
Wat Chang
所在地:ตำบลหันตรา อำเภอ พระนครศรีอยุธยา จังหวัดพระนครศรีอยุธยา 13000
Tambon Han Tra, Phra Nakhon Si Ayutthaya District, Phra Nakhon Si Ayutthaya 13000
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ワット・シーカサムット(วัดสีกาสมุด)
ワット・マヘーヨンの隣にある小さな遺跡寺院。
建立時期など詳細は不明。周りを水で囲まれた小さな島のような丘に建っています。
須弥山をイメージしているとも言われています。
本堂の後ろにある釣鐘型の仏塔は、ワット・マヘーヨンやワット・ラーチャブーラナの仏塔と同様のスタイルで、基壇部分にアーチ型の穴が開けられており、仏像が安置されていたのだと推測されています。
(今安置されている仏像は近年に造られた新しいものです)
私が訪れたときは、木でできた橋の床が所々崩落していたり、参道も草で覆われていたりで、途中で行くのをあきらめようかと思ったくらい、放置気味の遺跡でした。
ワット・クディーダーオ(วัดกุฎีดาว)
アユタヤの中心部から向かうとワット・マヘーヨンへ行く手前に、ワット・クディーダーオ(วัดกุฎีดาว)という寺院遺跡があります。
この寺院もアユタヤ時代には王室寺院として、重要な役割を果たしていました。
ワット・クディーダーオ寺院がいつ建てられたのかは諸説あり詳細は不明ですが、おそらくアユタヤ時代初期に創建されたと考えられています。
長方形の外壁とアーチ門(山門)で囲まれた境内には、前方東側に本堂、その後ろに仏塔(主塔)、そして仏塔の後ろ西側に礼拝堂が配置されています。
本堂側面は、アユタヤ後期建築の特徴でもある船腹型に湾曲したスタイルで、木製の屋根は消失し、今は三方の壁が残るのみ。
本堂後ろの仏塔はモン様式で、何度か修復の跡がみられますが、仏塔上部は崩落し、現在は釣鐘型の塔の一部だけが残っています。
仏塔の後ろ側には、本堂よりひと回り規模の小さな礼拝堂があります。
また、境内の随所に小塔が残っており、全部で14基あるのだとか。
境内の片隅にひと際目を引く建物の跡があります。
タムナック・カムマリアン(ตำหนักกำมะเลียน)と呼ばれる二階建て長方形のこの建物は、寺院の説明看板によると、幅14.6メートル、奥行き30メートルで西洋建築の影響を受けており、上下の壁には蓮の花びら型のアーチ窓が開けられています。
1711年アユタヤ時代後期に当寺院の大規模な修復工事が行われた際、当時副王であった後のボーロマコート王が視察で来られ、この建物に滞在されたと推測されています。
その後は、住職の住まい、または多目的講堂のような用途として使われた建物だろうと考えらています。
<寺院情報>
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ワット・クディーダーオ
วัดกุฎีดาว
Wat Kudi Dao
所在地:19 ซอย ป่าโทน ตำบล ประตูชัย อำเภอ พระนครศรีอยุธยา จังหวัดพระนครศรีอยุธยา 13000
19 Soi Pathon Pratu Chai Sub-district, Phra Nakhon Si Ayutthaya District, Phra Nakhon Si Ayutthaya 13000
時間:08:00-16:30
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今回紹介した4つの遺跡寺院は、アユタヤ歴史公園(アユタヤ島)の外側、東に位置しており、アユタヤのメジャーな遺跡群が集中する旧市街からは少し離れています。(車やバイクだと数分ですが)
この4遺跡に近いおすすめの宿は、以前の記事でも紹介していますので、よかったら参考にしてみてください。
それではまた。