かつて、現在のラオス一帯を支配したラーンサーン王朝。
(タイ語では『ラーンチャーン』=『百万の象』の意味)
そのラーンサーン美術様式の仏像が、アユタヤー旧市街の片隅にひっそりと安置されています。
はじめてその仏像を拝見し、その美しさに魅了されたのが数年前。
今回のアユタヤー週末旅行で再訪してきました。
第一級王室仏教寺院「ワット・セーナーサナーラーム」
タイにはタイ王室仏教寺院(1級から3級)に指定された寺院が全国に数百か所存在します。
その中で最も格式の高い第1級に格付けされた寺院が、アユタヤー県には3つあります。
そのうちのひとつが、ワット・セーナーサナーラーム・ラーチャウォーラウィハーン(วัดเสนาสนารามราชวรวิหาร)です。
ちなみに、あとの2つは、ワット・スワンナダーラーラームとワット・ニウェートタンマプラワットですが、これらの3寺院はいずれも観光客が押し寄せるということのあまりない、どちらかと言えばひっそりとした寺院です。
今回再訪したワット・セーナーサナーラームは、旧市街・遺跡群が集中するアユタヤ島の北東に位置します。
ちょうど、チャンタラカセーム宮殿(พระราชวังจันทรเกษม)の裏側にあたります。
細い路地の先に現れる寺院は、バンコクのワット・ポーやワット・アルンなどという超有名寺院と比べると、同じ第1級に格付けされているとは思えないほど、本当に静かな雰囲気のお寺です。
<寺院情報>
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ワット・セーナーサナーラーム・ラーチャウォーラウィハーン
วัดเสนาสนารามราชวรวิหาร
Wat Senasanaram Ratchaworawihan
所在地:101 อำเภอ พระนครศรีอยุธยา จังหวัดพระนครศรีอยุธยา 13000
101 Phra Nakhon Si Ayutthaya District, Phra Nakhon Si Ayutthaya 13000
TEL:035-251-518
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本堂(布薩堂)
ワット・セーナーサナーラームは、もともとワット・スア(วัดเสื่อ)というアユタヤ時代の寺院でしたが、1863年にラーマ4世の命により修復・再建されました。
本堂はアユタヤ様式の建築となっています。
本堂(または布薩堂)に安置されているのは、プラ・サムプッタムニー(พระสัมพุทธมุนี)という仏像です。
アユタヤ様式の美しい坐像で、降魔印を結んでいます。
本尊背後及び堂内の上部の壁には、天人の像が描かれています。
また、本堂の下半分の壁には、12か月の(王室)年中行事の様子が描かれており、なかなか興味深いです。
下の絵は入り口に面した壁に描かれており、ラーマ4世がプラチュワップキーリーカンへ日食観測の行幸をされた時の様子です。
(中ほどのバルコニーから望遠鏡で眺めておられるのがラーマ4世)
ちなみに、ラーマ4世は日食の日時を自ら正確に算出なさったことで知られており、このプラチュアップキーリーカン県への行幸でそれを証明されたわけですが、あいにくこの行幸が元でマラリアに感染し、その数日後に亡くなったと言われています。
本堂裏側に建つ仏塔
ラーンサーン王国の仏像
本堂の裏手には、ウィハーン・プラインプレーンというお堂があります。
堂内には、プラインプレーン(พระอินทร์แปลง)という名の美しい仏像が安置されています。
数年前に私がはじめて出会った瞬間に、魅力的な仏像だと感じた仏様です。
プラインプレーン仏は、ラオスの地にかつて栄えたラーンサーン王国で造られた仏像です。
19世紀半ば、当時ラーンサーン王国を支配下に置いていたチャックリー王朝(現タイ王朝)により、ビエンチャンから移されました。
このプラインプレーン仏、ビエンチャンからタイへもたらされた後、もともとバンコクのバーンラック区にあるワット・マハープルッターラーム寺院に安置される予定だったのですが、当寺院の建設(修復)が長引いたため、先に完成したワット・セーナーサナーナームに安置されることになったとのことです。
青銅に金を施したラーンサーン様式の仏像自体ももちろん美しいのですが、今回改めて感じたのは、この仏像は両脇の僧侶(弟子)像と光背を含めた全体のフォルムがなんとも言えない荘厳さと華麗さを醸し出しているのだということでした。
サーラのような樹木やペイズリー柄を思わせる珍しい形の光背装飾が印象的です。
ちなみに、前回訪れたときは、花の部分の電球はなかったような気がします。
(個人的には不要だと思うのですが・・・)
また、プラインプレーン仏には、インドラ神の化身が造ったという言い伝えが残っているそうです。
それで、堂内の壁画にはインドラ神に関する神話の絵が描かれています。
涅槃仏と僧侶を抱きかかえる珍しい仏像
本堂と先ほどのウィハーン・プラインプレーン堂との間に、もうひとつお堂があります。
このお堂の中には、プラプッタサイヤート(พระพุทธไสยาสน์)というアユタヤ様式の涅槃仏(14.2メートル)が安置されています。
かつてはプラマハータート寺院に安置されていた涅槃仏ですが、ラーマ5世の時代にこの地にお堂が建てられて遷座されたとのことです。
なかなか立派な涅槃仏なのですが、このお堂で目を引くもうひとつの仏像が、涅槃像のお顔あたりに安置されている立像なんです。
仏陀が僧侶を抱きかかえるようにしている像があるのです。
言葉は不適切かも知れませんが、いわゆるお姫様抱っこ。
このようなスタイルの仏像はあまり見たことがない気がします。
この仏像は、ルアンポー・プッタウッパタム(หลวงพ่อพุทธอุปถัมภ์)といい、病に伏した僧侶を看護する仏陀の姿を表しています。
※この形の仏像は、พระพุทธรูปปางพยาบาลภิกษุอาพาธ / ปางพยาบาลภิกษุไข้ と呼ばれることもあります。
よって、無病息災や病気の回復を願ってお参りする人が多いのだとか。
以上、アユタヤーの古刹、ワット・セーナーサナーラームの紹介でした。
ではまた。
<参考サイト>
http://www.dhammathai.org/watthai/central/watsenasanaram.php
https://mgronline.com/dhamma/detail/9580000122487
http://watsenasanaram.blogspot.com/
他