新型コロナウイルス騒ぎで人混みは避けなさいっていうし、換気の悪い空間も良くないらしいので、「じゃあ、一体どこならいいのか?」と考えて、行き着いた答えのひとつが、『バンコクお寺巡り』っていうまなおです。こんにちは。
延伸開通して環状線状につながったバンコクの地下鉄(というか、延伸部分はかなり地上の高架区間となった)MRTブルーラインに乗って、初めての駅で降りてみました。
目的は、その「バーン・クンノン駅(บางขุนนนท์)」の近くにある「ワット・スワンナーラーム(วัดสุวรรณาราม)」というタイ王室仏教寺院です。
ワット・スワンナーラーム(スワンナラームとも)は、観光地としてはあまり知られていないのですが、実は、美術的・文化財的にはかなり見所のある名刹でした。
ワット・スワンナーラームとは
正式名称は、「ワット・スワンナーラーム・ラーチャウォーラウィハーン(วัดสุวรรณารามราชวรวิหาร)」といい、タイの王室仏教寺院の第2級に指定されている格式高い寺院です。
もともとはアユタヤー時代に建てられた「ワット・トーン(วัดทอง)」という名前の寺院で、トンブリー王朝時代には、ビルマ(ミャンマー)軍捕虜の処刑場所として使用されていました。
その後、現王朝であるチャクリー王朝(ラッタナコーシン朝)のラーマ1世により、「ワット・スワンナーラーム」として新たに建立し直されました。
チャオプラヤー川西岸、トンブリー地区のバーンコーク・ノーイ運河沿いにひっそりとたたずんでいます。
地下鉄MRTのブルーラインが延伸したおかげで、バーン・クンノン駅(Bang Khun Non)から徒歩数分のアクセスになりました。
<寺院情報>
ワット・スワンナーラーム・ラーチャウォーラウィハーン
วัดสุวรรณาราม ราชวรวิหาร
Wat Suwannaram Ratchaworawihan
所在地:ซอยจรัญสนิทวงศ์ 32 แขวงศิริราช เขตบางกอกน้อย กรุงเทพมหานคร 10700
Soi Charan Sanit Wong 32, Charan Sanit Wong Road, Siri Rat Subdistrict, Bangkok Noi District, Bangkok 10700
TEL:081-908-0820
拝観料:無料
駐車場:無料
境内にあった配置図を載せておきます。
スコータイ王朝時代の本尊
バーン・クンノン駅の4番出口を降りて、ソイ・チャラン・サニットウォン32通り(Soi Charan Sanitwong Rd.)を入っていきます。
350メートルほど特に何もない道を進み、高校の裏手の道を左折してしばらく行くとお寺の本堂が見えてきました。




正面は運河側なので、こちらは裏門にあたります。
本堂背面からの画像です。
本堂正面に向かいました。
一瞬、閉まっているのかと思いましたが、扉が微かに開いていたので、中に入って参拝することにします。
この時代の寺院に共通することですが、中国の影響を受けたところが随所に。
本堂に入ってまず圧倒されるのは、正面に鎮座する黄金の本尊です。
大きさもさることながら、威厳と慈悲の入り混じった眼差しに捉えられるような感覚になりました。
この本尊は、ワット・スタットの本尊と同じ製作者によるスコータイ様式の仏像で、ラーマ1世の命によりスコータイから遷座されたと伝えられています。
スコータイ様式ということもあってか、本尊の向かって左前には遊行仏も安置されていました。(これはおそらく最近の作?)
一流画家の対決!?圧巻の本堂壁画
ワット・スワンナーラーム本堂(プラ・ウボーソット:พระอุโบสถ)でもう一つの必見ポイントは、壁一面に描かれた壁画です。
非常に繊細な描写が圧巻です。
この壁画の一部は、2人の著名な画家によって描かれています。
トーンユーとコンペ
ラーマ3世の時代にワット・スワンナーラームの修復が行われました。
その際、本堂の壁画制作を任された中に、ルアン・ウィチットヂェーサダー(通称「トーンユー」:ทองอยู่)と、ルアン・セーニーボーリラック(通称「コンペ」:คงแป๊)という、当代きっての一流画家2人がいました。
2人は釈迦の前世の物語である「ジャータカ」(タイ語ではチャードック:ชาดก)の中の話を題材にそれぞれ壁画を描きました。
完成するまでは、互いに布で隠して、ライバルである相手に見えないように牽制しながら作成したそうです。
まさにプライドをかけた絵画対決だったわけですね。
壁画作品群
残念ながら、私はジャータカ物語にも絵画にも精通しているわけではないので、
お寺で鑑賞していた時には、どの部分がどの一節で誰の作品なのかということまではさっぱりわかりませんでしたが、
全体的に細密な描写には圧倒されました。
人々の表情や仕草が活き活きとしており、見ていて楽しかったです。
いくつかの場面を載せておきたいと思います。










その中で私が一番好きな1カットがこれです。
このなんとも言えない表情と独特な衣装。
このシーンに出てくる人たちの描き方は、どれも魅力的でした。
数千年前の話に鉄砲が?
でも、私にはよくわからないことがありました。
それは、上記のまなおお気に入りショットを含む同じ作品の絵なんですが、お釈迦様の前世の物語に鉄砲が出てくることでした。
しかも、鉄砲を構えているのは、いわゆるファラン(欧米人)です。
これは何なのでしょうか?
私なりに考えたのは、
- 単純に、この部分はジャータカ物語ではない。
- 画家は、(釈迦の前世である)この時代に鉄砲がなかったことを知らなかった。
- 鉄砲がこの時代になかったことは知っているが、武器を象徴するもののひとつとして、自身のイマジネーションを表現した。
ということなんですが、
誰かに見解を聞きたくて仕方がありません。
どなたか知っている方いらっしゃいますか?
資料とかあれば読んでみたいです。
※この中で、1. に関しては、後日ジャータカ物語の一節で間違いないことがわかりました。
2人が描いた壁画が判明!
後日、タイ友の協力も得ながら調べたところ、どうやら、以下の2つがトーンユーとコンペの作品であることがわかりました。
実は、この2人の作品は隣同士の配置だったんですね。
トーンユーは、ジャータカ(チャードック)10話中、4つ目の説話「ネーミラート・チャードック」という話を描き(写真上)、
コンペは5つ目の「マホーソット・チャードック」という話を描きました(写真下)。
トーンユー作「ネーミラート・チャードック」(เนมิราชชาดก)
コンペ作「マホーソット・チャードック」(มโหสถชาดก)
私が自分好みの画風だと思いつつ、欧米人が鉄砲を持っているのを奇妙に感じた作品が、実はコンペの作品んだったんですね。
その他の壁の絵に関しては、2人が手掛けたものなのか、他の絵師たちが描いたものなのかはわかりませんが、あきらかに画風が違うものや少し雑な箇所があったりするので、他の何人かの絵師による合作なんだろうなと勝手に推測しています。
礼拝堂・鐘楼・経蔵
本堂の横に建っているのが、礼拝堂(プラ・ウィハーン:พระวิหาร)です。
本堂と同じように、前面と背面にテラスのようなスペースと階段がありますが、お堂の中は壁画もなく極めてシンプルでした。
仏像から伸びた聖なる糸が堂内に張り巡らされています。
礼拝堂のさらに隣、僧坊エリアの一角に、真白な鐘楼(หอระฆัง)と三蔵庫(หอไตร)が並んでいました。
運河でタンブン
本堂や仏堂エリアから離れて運河沿いに出てみると、タークシン王の銅像やナーガ(龍王)像、そして観音像などがありました。
その一角に、何やら自動販売機のようなものが。
魚のエサ販売機でした。(笑)
運河沿いにあるタイのお寺では、魚の餌やパンを売っていることが多いです。
参拝者はそれを買って、運河の魚に与えて徳を積む(=タンブン)ということをよくします。
土曜日の昼下がり、私以外に誰も参拝者に出会わなかったこのお寺で、
なぜか『たまにはタンブンをしてみるか』という気になった私。
というか、自動販売機に興味を覚えたという方が強かったんですけど。
『小さい5バーツのほうでいいかな』と近づいていくと、テープが貼られてました。(笑)
これが10バーツぶんの魚の餌です。
多すぎ。
炎天下の昼下がり、誰もいない寺院の桟橋から1人巨大ナマズたちに餌をやる私。
マスクにサングラスという出で立ちで、
撒いても撒いても一向に減らない魚の餌に茫然としながら、
ほぼ直立不動でスプーンを振り回していたら、
貸し切りボートで前を通ったファランのカップルに写真撮られました。
きっとシュールな写真になっていることでしょう。
謎の東洋人が、一時でも笑いを提供できるなら本望♪
タンブンで汗だくになった私は、
とにかく日陰に退散!
僧房の方へ歩いて行くと、ケージの中で飼われている鶏を発見。
ふわふわした羽毛が可愛らしくて写真を撮っていたら、何やら隣から視線を感じます。
ふと見ると、すごく大きなケージに鳥がわんさか。
えっ、く、孔雀?
バサっバサって、めちゃくちゃ求愛してます。
メスはガン無視っぽかったですけど。(笑)
孔雀があんなに羽広げてるの、久しぶりに見ました。
おわりに
MRTブルーラインの延伸区間のバーン・クンノン駅からほど近い、ワット・スワンナーラームは、本尊や150年以上前に描かれた壁画が素晴らしいタイの王室仏教寺院です。
当代きっての一流画家が、対抗心を燃やしながら競って描いたといいます。
そんなエピソードを想像しながら、自分の好みの壁画を探してみるのも楽しいかもしれません。
観光客でごった返したお寺はちょっと・・・という方にはおすすめです。
このお寺を参拝したあと、タリンチャン水上マーケットへ行った話は、また次回に。
ではまた。