バンコクの川向う、トンブリー地区の下町タラートプルーにある珍しい仏像を紹介します。
タイによくある涅槃像と言えば、片肘で頭を支えて横向きに寝るスタイルが一般的ですが、たまに仰向けになって横たわる涅槃仏に出会うことがあります。
ワット・ラーチャクルにも、そんな仰向けに眠る仏陀像が安置されています。
ワット・ラーチャクル
ワット・ラーチャクル・ウォーラウィハーン(วัดราชคฤห์วรวิหาร)は、タイの王室仏教寺院の第3級に格付けされている由緒正しい寺院です。
トンブリーのタラートプルー駅から徒歩数分、バーンコークヤイ運河沿いに位置しており、アユタヤー時代後期にこの辺りに移住してきたモン族によって建立されました。
その後ラーマ1世の時代に修復が行われ王室寺院となり、ラーマ3世の時代にも大規模な修復が行われて現在に至っています。
仰向けの涅槃仏
国鉄タラートプルー駅からトゥートタイ通り(ถนนเทอดไท)を歩いてお寺に向かい、寺院の門をくぐった先の右手にあるお堂にその珍しい仏像が安置されています。
横向きに肘をついて横たわる涅槃仏はたくさん拝見していますが、天を仰ぐように横たわる姿はなかなかお目にかかれません。
この涅槃像、タイ語では、パーン・タワーイ・プラプルーン(ปางถวายพระเพลิง)、または、プラ・ノーン・ガーイ(พระนอนหงาย)呼ばれ、お釈迦さまが入滅され荼毘に付される前の、仰向けに横たわる姿を表しています。
アユタヤ時代に造られた仏像だと考えられおり、ルアンポー・スックサバーイ(หลวงพ่อสุขสบาย)と呼ばれています。
幸せに満ちた仏さまということなんでしょうね。
ワット・ラーチャクル寺院については、以前にも訪れたことがあり当ブログで紹介しています。
今回は、病気平癒の祈願で参拝しました。
健康や病気の回復を祈願するお寺について調べたら、いくつものサイトでここが紹介されていたので、闘病中の大切な友人の快復をお祈りしたかったのです。
お堂手前の仏像の前で蝋燭を灯し、線香をあげてお参りした後、堂内に入って涅槃像に花を捧げました。
ここで、メーチー(尼さん)が、お祈りの方法を教えてくださいました。
ナモタサを三度唱えた後、この仏像に捧げる真言(マントラ)を唱えます。
(プレートに書いてあるタイ語をたどたどしく発声)
それから、仏像の足の裏に手の平を当てながら、叶えていただきたい内容を心の中で祈願しました。
男性はお釈迦さまの右足(お堂に入って左側)、女性は左足(お堂の右側)に手を当てるそうです。
なお、私たちは、涅槃仏に布をかける祈願(奉納)も行いました。
おそらく気持ち次第のお布施でいいのでしょうが、メーチーが「99バーツとか…」などと言っていたので、その通り99バーツをお賽銭箱に入れて…と思いましたが、あいにく細かいお金がなかったので、QRコードを読み込んでオンラインで振り込みました。
(なんという時代でしょうか!)
お堂の隅にたたんで置いてある布をひとつ手にして、そっとお釈迦さまのお体の上にかけさせていただきました。
礼拝堂の宝冠仏
涅槃仏の参拝が終わったあと、お隣の礼拝堂もお参りしました。
この礼拝堂は、もともとは本堂があった場所です。
メーチーの説明によれば、この礼拝堂本尊の仏像はアユタヤから流れてきたという言い伝えがあるようです。
今回私が興味を持ったのは、手前に安置されている宝冠仏でした。
パーリライ(パーレーライ)というスタイルの仏像で、お釈迦さまが森の中で象と猿に説法をしている姿を表した仏像なのですが、このパーリライ仏が宝冠や王族の衣装を身にまとっているのは珍しいなと感じました。
宝冠仏というと、日本では釈迦如来ではなく、観音菩薩や弥勒菩薩など、主に菩薩像のイメージがあります。
これはお釈迦さまがまだ仏陀になる前、釈迦族の王子であった頃のお姿をモデルにされているそうです。
タイでも基本的にはお釈迦さまの仏像は袈裟をまとっただけのものが多いものの、中には宝冠の装飾が施された仏像もそこそこあるのですが、象と猿を前にした仏像で煌びやかな装飾をしているのはあまり見かけない気がしました。(思い違いの可能性もありますが…)
タワーイ・サンカターン
最後にサンカターンを行いました。
タワーイ・サンカターン(การถวายสังฆทาน)というのは、僧侶に供物を献上するお布施のことで、自宅からお供物や食べ物を持ってきてもいいのですが、たいていはお寺の一角やサンカターンを行う場所にお供えセット(だいたいオレンジのバケツに入っている)が用意されているので、それを購入して献上することが可能です。
私もお寺で購入しました。
その時は、ちょうど他にも3組ほどサンカターンの献上に来ている人がいたので、合同で一緒に行ってもらいました。
僧侶の前に座り、礼拝して決まったお経や真言を唱え、供物を献上して、僧侶に読経していただいたり聖水をかけていただいたりします。
私がそらんじて唱えられるのは、恥ずかしながらナモタサの3回唱和くらいなので、あとのお経は最初だけ他の方の真似をしつつモニョモニョ言ってみたりもしましたが、途中からはそれすらできずに静かに合掌のみしておりました。
『気持ちが肝心』と自分に言い聞かせて…(汗)
ナモタサってなんなのさ?
ちなみに、読経の最初に必ず唱和するナモタサ(ナモータッサ)からはじまる短い経文のような言葉は、お釈迦さまへの敬禮文(敬意を示す言葉)で、以下の通りです。
タイ語では『ナモーを3回唱和しなさい』みたいに言われます。
"นะโม ตัสสะ ภะคะวะโต อะระหะโต สัมมาสัมพุทธัสสะ"
「ナモー タッサ パカワトー アラハトー サンマー サンプッタッサ」
これを3回唱えます。
(これだけでも、外国人が唱えられるとタイ人にびっくりされると思います)
以上、トンブリーにある珍しい涅槃仏寺院を参拝し病気平癒を祈願した話でした。
ではまた。