バーンスー中央駅のグランドオープンに伴って、間もなく閉鎖されるというタイ国鉄のフアランポーン駅。(正式名称:クルンテープ駅 สถานีกรุงเทพ/英語ではバンコク駅 Bangkok railway station)
1916年の移転竣工以来、100年を超える歴史に幕が閉じられようとしています。
※2021年12月21日、利用者からの不満の声を受けて、運輸相がタイ国鉄に改めてバーンスー新中央駅への全移管による影響評価を行うよう指示し、しばらくはフアランポーン駅からの発着を今まで通り継続することが発表されました。
とりあえずは引き続きフアランポーン駅の機能は存続されることとなりましたが、予定の2日前での変更っていやはやタイらしいというかなんというか・・・。
以上、2021年12月22日追記
駅としての機能が廃止された後は博物館として保存され、同時に駅周辺の再開発も進められるようですが、現役の列車が乗り入れする様子を見られるのもあとわずか*1。
名残り惜しさを胸にフアランポーン駅を訪れました。
※タイトルでカウントダウンなんて書いておいて恐縮ですが、現時点で、フアランポーン駅発着の列車が完全になくなる日についてはまだ明確に発表されていません。
各メディアごとに内容が違ったり、日々一転二転したりと、情報が錯綜しています。
2021年11月15日付の「MGR ONLINE」の記事では、12月23日以降徐々にフアランポーン発着の列車を新バーンスー駅や旧バーンスー駅、ランシット駅などからの発着に切り替えていくようですが、数本の路線はまだフアランポーンからの発着となるようなことが書かれています。
また、2021年12月5日にフアランポーン駅のインフォメーションで尋ねたところ、12月23日以降もいくつかの近距離路線はまだフアランポーン駅から発着するとの回答でした。
※クルンテープ駅の通称、「フアランポーン駅」の日本語表記は様々で、統一されていません。(ホアランポーン、ホアラムポーン、フアラムポーン、フワランポーン、フワラムポーンなど)
当記事では、フアランポーンとします。
- 天使の都バンコクの玄関口
- フアランポーンの朝
- 鉄道発祥の記念碑
- バーンスー駅まで
- ディーゼル機関車
- 昼間のフアランポーン駅
- 夕暮れ時のフアランポーン駅
- これは何の車両?
- 今後のフアランポーン駅からの発着は?
- 駅前ホテルはロケーション最高!
- おわりに
2021年11月、私は合計6日間フアランポーン駅を訪れました。
12月は今のところ2日間訪れています。
日帰りで訪問したり、早朝や深夜の様子も見たくて4回ほど駅前のホテルで泊まったりもしました。
今回は、その時に撮った写真や動画をメインに、フアランポーン駅の様子をお伝えしたいと思います。
天使の都バンコクの玄関口
かつては大都会バンコク(クルンテープ=天使の都)の玄関口として君臨したバンコク中央駅フアランポーン。
バンコク下町の人々の生活が息づき、通勤・通学、行商、旅行で利用する人たち、あるいは駅の業務に携わる様々な人たちが行き交い、早朝から夜中まで絶えず賑わっていました。
そんな、人々の悲喜交々を105年間見守ってきた駅が引退を迎えると思うと、感慨深いものがあります。
ラーマ5世からラーマ6世の時代にかけて、ドイツのフランクフルト駅をモデルに造られたという、アーチ型のドーム屋根を持つ駅舎は、中央駅というのにふさわしい風格とノスタルジックな雰囲気が漂っています。
ちなみに、フアランポーン駅のモデルについては、イタリアのポルタ・ヌオーヴァ駅(トリノ)だという説もあるそうです。
フアランポーンの朝
まだ夜の明けきってない午前6時前。
暗闇の中に駅舎正面アーチと丸時計が浮かび上がっています。
駅構内には出発を待つ人たちがちらほら。
到着した列車から降りてくる人、そして乗り込む人たち。
照明の灯りと薄暗さが交差するホームには、ディーゼル音が響き渡っています。
ホームの端まで歩いて、発着する列車を眺めてみたり、夜明けの空を眺めてみたり。
タイムラプスで撮影してみたり。
ホームの先端ぎりぎりの場所が気に入って、ずっとそこに座って写真を撮っていました。
2日目の朝も同じ場所に腰を下ろしていると、守衛のおじさんが「また来たのか」と話しかけてくれました。
それからも数日、おじさんと朝の挨拶をするようになりました。
チェンマイからの寝台特急が到着したようです。
乗客が降りきるとさっそく車内整備・清掃の開始です。
回収したリネン類がまとめてホームに放り投げられています。(笑)
※写真は数日間に撮りためた中から適当に貼っています。
鉄道発祥の記念碑
駅の北西、12番ホームの一番端あたりに、立派な記念碑があります。
これは、1896年3月26日にラーマ5世隣席の下、鉄道開通式典が行われたことを記念して建てられたものです。
記念碑の後ろ側には、蒸気機関車も展示されています。
駅のホームを歩いてここまで来る人は少なかったですが、この場所から列車が発着する様子を見るのもなかなかいいものでした。
あと、ホームの端に無造作に行き先のプレート(?)が置いてあったんですが、これ、こういうの好きな人いるでしょうね。
バーンスー駅まで
ある日、すっかり明るくなった午前8時過ぎに、ふと思い立ってバーンスー駅まで乗車してみることにしました。
フアランポーン発着の列車が走るのも、あとどのくらいかわかりません。
少しでもたくさん雰囲気を味わっておきましょう。
チケットブースで直近の列車を選んでもらいます。
ノーンカーイ行きの急行3等車席、20バーツ。
一番先頭の車両でした。
フアランポーンの駅を出てから、しばらく下町の中をゆっくり走る風景が好きです。
線路わきを歩いたり車両ギリギリのところで横断待ちをする人がいたり、小さな屋台が並んでいたり、洗濯物が揺れていたりと、人々の生活が垣間見れます。
約20分程度の乗車でバーンスー駅に到着。
従来の古めかしい国鉄の駅と、その隣に建てられたばかりの巨大で近代的な新中央駅との対比がすごく、新駅構内を少し散策などもしてみたのですが、今回はフアランポーン駅が主役なので、バーンスー駅のことはまた機会があったら改めて書きたいと思います。
9時44分の南部トランからやって来た急行に乗って、再びフアランポーン駅に戻りました。
ディーゼル機関車
ディーゼル機関車が現役で大活躍のタイ国鉄。
機関車1両だけがフアランポーン駅のホームから出たり入ったりしているのを何度も見かけて、あれは何なんだろうと思っていたんです。
鉄道に詳しくない私ですが、数日通ってなんとなくわかってきました。
こういうことだったんですね。
例えば、チェンマイ方面からバンコクにやってくるときは、当然、機関車は先頭についています。
終着駅フアランポーン(クルンテープ駅)に入ってきた列車は、プラットホーム一番手前側に機関車、そしてその後ろに客車が連なっています。
乗客を降ろして車内整備を行ったら、今度はまた別の目的地に向かって出発していくのですが、そうすると今度は逆側、一番後ろだった側が先頭となるわけです。
ですから、さっきまで客車の一番後ろだった場所に、機関車をくっつけるために機関車だけが近くの待機場所(?)からやってきてジョイントするわけです。
と同時に、さっきまで一番手前にあった機関車は切り離され、列車が発車していった後にしばらくして機関車だけが待機場所に戻っていくという仕組みなんですね。
って、そんなことも知らんかったんかって突っ込まれそうですが、知りませんでした。というか、あまり考えたことがありませんでした。(汗)
昼間のフアランポーン駅
人で賑わう長距離列車は朝や夕方から夜にかけての発着が多いのか、日中のフアランポーン駅は、なんとなくのんびりとした雰囲気です。
私は、タイ国鉄のこの木製のベンチが好きです。
曲線がなんとも温かみのあるレトロな雰囲気を醸し出しています。
洗車をしている人たちも心なしかのんびり作業しているような気も・・・。
洗車しているところを何分も眺めていた私も、相当な暇人だと思いますが。笑
夕暮れ時のフアランポーン駅
日が傾き西の空がオレンジ色に染まりだす頃、フアランポーン駅は再び活気づいていました。
北本線や東北本線、南本線の特急や急行列車が次々と発車していきます。
18時過ぎのチェンマイ行の寝台列車には、私も何度か乗ったことがあります。
よかったら、以前の動画もご覧ください。
ノーンカーイ行きの寝台特急も楽しかったです。
(初めて1等車に乗りました!)
18:10発チェンマイ行き特急9号が定刻で発車。
もう一度この寝台列車には乗ってみたいですが、今度乗るとすればバーンスー駅からとなるでしょうね。
これは何の車両?
シャシー(台車)の部分だけがホームの後ろにずらっと停まっているいるのが気になって、近くに見に行ったら、日本製(富士車輌株式会社)のものでした。
通りがかった駅員さんに、これは何かと聞いてみたら、
「あー、これは戦車を運ぶ車両で普段は別の場所に保管されているんですが、今、バーンスー中央駅への引っ越しでスペースがごった返しているから一時的にここに停めているだけなんです」
とのことでした。
今後のフアランポーン駅からの発着は?
11月後半以降は、(私も含め)乗客でない人もたくさん駅構内で見かけるようになりました。
みなさん引退間近のフアランポーン駅での記念撮影に余念がありません。
12月5日の夜、駅構内のインフォメーションでフアランポーン駅発着の列車の今後について聞いてみたところ、
「基本的には12月22日までですが、12月23日以降も一部の近郊列車(Commuter/รถไฟชานเมือง)は引き続きフアランポーン駅から発着する」
とのことでした。
いろいろ情報が錯綜していてよくわからないですね。
完全廃止するとか商業開発をするとか、タイ国鉄の労組がフアランポーン駅の廃止計画に反対表明とか、首相からフアランポーン駅の今後について改めてよく考えるよう指示があったとか、公聴会が開かれるとか・・・。
いずれにしても、寝台特急をはじめ中・長距離列車がフアランポーン駅を発着するのはあとわずか。(のはず)
個人的には駅の存続を望みますが、いろんな意見や思惑があるでしょうからね…。
少なくとも今までのような中央駅としての賑わいが失われるのも、秒読み段階となったと言えそうです。
そのへんは覚悟して、もうしばらく現役最後の姿を惜しみたいと思います。
駅前ホテルはロケーション最高!
駅前のホテル「ザ クォーター フアランポーン by UHG」に泊まった時は、部屋の窓からもゆっくりフアランポーン駅を眺めていました。
このホテル、目の前にフアランポーン駅を望める最高のロケーションです。
ただし、フアランポーン駅ビューを楽しみたい場合は、デラックス以上の部屋を予約したほうがいいです。
(部屋によっては窓がなかったり、反対側の部屋だったりすることもあるので)
デラックスの部屋でもよっぽどの連休などでない限り、朝食付きで700~800バーツ程度(約2,400~2,700円)で宿泊することができます。
その朝食もビュッフェスタイルで必要十分な品揃えでそこそこ美味しく、値段を考えたら満足できるものでした。
ちなみに、フロントの横にあるプールを挟んだ反対側からは、ワット・トライミット寺院や中華街、アイコンサイアム方面の景色も見ることができます。
agodaでThe Quarter Hualamphong by UHG を探す
おわりに
以上、105年続いた中央駅の座をもうすぐ明け渡すこととなったフアランポーン駅を惜しみつつ、まとまりもなくだらだらと書いてしまいました。
フアランポーン駅構内に佇んでいると(本当に何時間もいました)、私の意識がどこかに飛ぶような、回想に耽ってしまうような瞬間が何度かありました。
雑踏や喧噪の合間にふと訪れる静寂。
そんな不思議な時間と空間を体感できるのも、残りわずかなんだなあと思ったり。
なんて言いつつ、まだあと何回か通ってしまうかも…。
というか、近々ひまわり列車に乗るんでした!
この話はまたの機会に。
ではまた。
*1:駅廃止という計画で進んでいますが、本当にいつ閉鎖になるのかどうかは明確に決まっていません