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バンコク生活の中で気づいたことや感じたことを書き連ねます。タイの生活情報やタイ語のあれこれ、タイ国内旅行、近隣諸国訪問なども織り交ぜながら。

「ラック」が「ラング」に聞こえる。もしかして、それハミング?【タイ歌末子音にまつわるなんちゃって考察】

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昔から、タイポップスやタイ演歌(ルークトゥン、モーラム)などを聴いていて、たまに違和感を覚えることがありました。
末子音の発音が自分の頭で想像している音と違う音に聞こえる気がするのです。

具体的に言うと、”รัก”(ラック /rák/)が、”รัง“(ラング /raŋ/)に聞こえたりするんです。

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今まで、何度かタイ人に「このラック、ラングって“ง”で歌ってない?」と聞いたこともあるんですが、そのたびに「は?」と一蹴されてきたので、自分の耳(聞き分け能力)が悪いんだと思っていました。

ところが、最近、自分の耳が悪いということは否定しないながらも、あることに気づいたんです

それは、
私がラングの“ง”に聞こえていた部分って、もしかしてハミングだったりしない?
ということなんです。

何を訳のわからないことを・・・と思われるかもしれませんね。

私はタイミュージックに精通しているわけでも、音楽の知識があるわけでもありませんが、私なりに考えたことを書いてみます。

この後、本文で引用する曲が古いものばかりなのは、ご愛敬ということでお許しください。
(最近の歌、知りません。笑)

また、タイ歌の例と動画は、記事後半に載せてますので、興味ある方は動画だでもご覧になってみてください。懐かしいですよ。

 

 

なぜ聞き間違えるんだろう?

冒頭でラックラングに聞こえるって言いましたが、全てのラックがラングに聞こえるわけではないんです。
歌手によっても違うし、同じ歌手が歌っている同じ歌の中でもラングに聞こえる箇所と普通にラックに聞こえる箇所があったりするわけです。

だから、なんでだろうと不思議に感じていたんですが、
いろいろ考えた挙句、
「促音節末子音を長く伸ばした時に起こる現象なのでは?」
ということに思い至りました。

あ、なんだか小難しい意味不明なこと書いちゃいましたかね。

一体どういうことかというのを、これから説明下手ながらも書いてみますので、どうかここでページを閉じないで、もうちょっとだけ読んでいただけると嬉しいです。


促音節末子音(そくおんせつまっしいん)というのは、
イメージとして、小さい「ッ」の入る音だと思っていただければいいです。
「マック มัก /mák/」とか「ミット มิด /mít/」とか「サップ สับ /sàp/」などです。
これらの小さい「ッ」の後に続く子音のことを促音節末子音と呼んだりするんです。(名前はどうでもいいです)
「-k」「-t」「-p」という音ですね。

※日本語は基本的に母音で終わるので、日本人は「makku」「mitto」「sappu」という風に母音を付けてしまいがちですが、タイ語の末子音の後には母音はつきません。
カタカナとミックスして表現するとしたら、「マッk」「キッt」「サッp」みたいな感じでしょうか。

※また、長母音だと「マーク มาก /mâak/」「ミート มีด /mîit/」「サープ สาบ /sàap/」などと、小さい「ッ」が入らないカタカナ表記にすることが多いんですが、
とにかく、促音節末子音というのは、最後が「-k」「-t」「-p」になる音だということだけ理解してもらえれば十分かと。
(「マーk」「ミーt」「サーp」)


私がよく聞き間違える”รัก”(ラック /rák/)は、この中の「-k」という促音節末子音なわけです。
“รัก”の「ラック /rák/ 」が“รัง”「ラング /raŋ/」に聞こえてしまうのは、なぜなんでしょうか?

まあ、タイ人に尋ねてみても、ネイティブは正しく「ラッk /rák/ 」と聞こえているようなので、私の聞き取りに問題があるのだとは思うんですが、なんでそう聞こえるんだろうと、ずっと心の隅っこで気になっていたのです。

普段の会話ではそれほど聞き間違えないんですが、どうして歌だとそう聞こえてしまうんだろうって。

それが、最近(といっても2年ほど前ですが)、ある曲を聞いていてふと閃いたんです。
あれ、末子音のあとにハミング的なものを入れてるんじゃないかと。
短母音の言葉でも、歌の場合はメロディーに合わせて長く伸ばすことってあるじゃないですか。

ただ、短母音に続く「-k」「-t」「-p」という促音節末子音って、長く伸ばすのが難しいから、曲の中で拍を伸ばす時に、「ラッk」と歌ったその直後に「ん~」的な音を挿入してるんではないだろうかと思ったわけです。

ラッkん~

みたいな。

で、この「ん~」の部分が「ง~ /ŋ~/」のように、私には聞こえてしまってるんじゃないかと思ったんです。

私は無意識の内に、『歌の中で音を伸ばすなら、「ラ〜ッk♪」のように、母音を伸ばすものだ』と思い込んでいたので、自分が脳内で勝手に待ち構えていた /-k/ のタイミングの場所に、ハミング(と呼ぶのかどうかはわかりませんが)的な /-ŋ/ の音が来ていたので、ラング(/ráŋ/)と聞こえたのではないでしょうか。

つまり、実際には、その歌手は、”รัก”という短母音の言葉通りに、短く「ラッk」と発音しており、その後、メロディーに合わせて「ん」/ŋ/ を伸ばして歌っていたわけです。

というのが、私の中での結論。
(あってるかどうかはわかりません。キリッ)


※説明が下手で申し訳ありません。実際のタイ歌の例は後で紹介ますので、ご興味あるかたは、一度聞いて確かめてみてください。

 

日本語の促音の歌い方あれこれ

日本語の促音(小さい「っ」)も、歌によって、人によって、微妙に歌い方が違ったりするんですよね。
いくつか例を挙げてみたいと思います。

富士山

まずは、誰でもよく知っている唱歌「ふじの山(富士山)」から。
「富士は日本一の山」というところの「にっぽん」ですが、音を伸ばして「にーぽん」となりますよね。

ふーじはにーぽんいちのーやまー♪

ここ、「にいぽん」みたいに「に」の母音である「い」を伸ばして歌う感じがほとんどだと思います。
(ただ、この歌は「に」と「い」の音(音階)が同じなので「に ぽん」みたいに2つ目の音は発声せずに歌うことも可能です)

ローマ字にすると、「ni i po n」とか「ni - po n」みたいな感じ。

格好悪い振られ方

続いて、30年近く前の古い歌で恐縮ですが、「格好悪い振られ方」(大江千里)という歌、ご存知でしょうか?(最近の芸人の方がネタにしてたりもするようなので、知ってらっしゃいますかね?)

かっこわるーいふられかーたー♪

この冒頭の「かっこ」の部分ですが、実際には、「かあこわるうい」(「かーこわるーい」)みたいに歌われてたりします。
ローマ字にすると、「ka a ko wa ru u i」という感じですかね。

 

格好悪いふられ方

格好悪いふられ方

  • 発売日: 2014/04/15
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 



ZUTTO

せっかくなので(なにが?)、同じくらいの時代の曲を。
「ZUTTO」(永井真理子)ってご存知ですか?

この曲のサビの部分「ずっと、ずっとね」

ずーうとー、ずうーとねーえー♪

「zu - u to -」「zu u - tto ne e -」みたいな。

 


永井真理子 ZUTTO

 

栄光の架け橋

最後に、新しめの曲を。(それでも古い。汗)
「栄光の架け橋」(ゆず)の出だしの部分です。
「誰にも見せない泪があった 人知れず流した泪があった」

なーみだーがああったー♪

「a a - tta -」

 

栄光の架橋

栄光の架橋

  • 発売日: 2019/05/15
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

こうしてみると、日本語の促音「っ」の入った言葉を伸ばして歌う場合、前の音の母音を伸ばして歌うことがほとんどなようです。
これは促音「っ」を1拍(モーラ)として認識する日本語の特徴に関連しているんじゃないかと思うんですが。

こうした母語の干渉(なんて大袈裟かな?)により、タイ語でも促音(促音節)を伸ばすときには母音を伸ばすものだという無意識の思い込みから、まさか末子音を短く発音した後にハミング的な音で伸ばしているなんて思いもしなかった、聞き取れていなかった、ということなんではないかと考えたわけです。



タイ歌の例あれこれ

蘊蓄(うんちく)がとっても長くなりました。
ここからは、実際に私が違和感を覚えていた、というか、聞き間違いをしていたタイの曲をいくつか紹介しながら、語っていきたいと思います。(まだ語る。笑)

ここでは、同じ歌を別の歌手が歌っている動画をペアでいくつか紹介しています。
歌手によって聞こえ方(歌い方)が違っているのもおもしろいです。

 

เวลากับคนสองคน(ウェーラー カップ コン ソーン コン)

まずは、マーシャー(มาช่า)さんのヒット曲、「เวลากับคนสองคน」です。
すっごく古い。笑
2人の時間はもう戻らないけど失恋の痛みはいつか時間が癒してくれる、みたいな切ない歌ですね。

この曲の出だしの部分、

วันเวลาได้นำพาทุกอย่าง ได้นำทางเราสู่ความรัก
wan weelaa dâi nam phaa thúk yàng  dâi nam thaaŋ rao sùu khwaam rák
ワン ウェラー ダイ ナム パー トゥック ヤーン ダイ ナム ターン ラオ スー クワーム ラック

この最後の「クワームラック(愛)」の部分ですが、
マーシャーの歌い方だと、私は特に違和感を覚えないんです。
割と普通に「ラッk(/rák/)」に聞こえます。
これは、マーシャーが「ラーッk」と母音を伸ばして最後に「-k」を入れて歌っているからだと思います。


เวลากับคนสองคน - มาช่า วัฒนพานิช 【OFFICIAL MV】


ところが、この曲をカバーして歌っているモート(โมทย์)さんの歌い方だと、「ラング(/ráŋ/)」に聞こえるんです。
ラッkの後に「ん〜」と歌ってる?


เวลากับคนสองคน - ปราโมทย์ วิเลปะนะ【OFFICIAL MV】

 

อยากรู้แต่ไม่อยากถาม(ヤーク ルー テー マイ ヤーク ターム)

次は、Calories blah blah のヒット曲「อยากรู้แต่ไม่อยากถาม」(知りたいけど聞きたくない)
これも十数年前のヒット曲ですね。笑

出だしから少し先の「クワームルースック(気持ち)」の部分とその後に続く「ルックルック(深く)」「ラック(愛する)」にご注目ください。

ได้ชิดเพียงลมหายใจ แค่ได้ใช้เวลาร่วมกัน
แค่เพื่อนเท่านั้น แต่มันเกินห้ามใจ
ที่ค้างในความรู้สึก
ว่าลึกๆ เธอคิดยังไง รักเธอเท่าไร แต่ไม่เคยพูดกัน

ความรู้สึก /khwaam rúusʉ̀k/ クワームルースック
が、Calories blah blah の歌い方だと、普通に「ルースッk(/rúusʉ̀k/)」に聞こえます。

また、
ลึกๆ /lʉ́k lʉ́k/ ルックルック も、
รัก /rák/ ラック も、
普通にそれぞれ「ルッk ルッk(/lʉ́k lʉ́k/)」「ラッk(/rák/)」と聞こえます。


อยากรู้...แต่ไม่อยากถาม - Calories Blah Blah【OFFICIAL MV】



一方、下の動画のルラー(ลุลา)さんの歌い方だと、
最初の ความรู้สึก /khwaam rúusʉ̀k/ クワームルースック が、
私には「ルースンg(/rúusʉ̀g/)」に聞こえたんです。
これも、スッkの後に「ん〜」みたいなのが入ってるんじゃなかと疑ってます。

ただ、その後の、
ลึกๆ /lʉ́k lʉ́k/ ルックルック と
รัก /rák/ ラック については、
ちゃんと「ルッk ルッk(/lʉ́k lʉ́k/)」「ラッk(/rák/)」に聞こえます。


อยากรู้...แต่ไม่อยากถาม - บอมบ์ ยุทธนันท์,Lula【OFFICIAL MV】

 

本題とは関係ありませんが、このMVを見てると涙が出そうになります。
タイ語の勉強も兼ねてタイのドラマをよく観ていた当時、人気俳優だったポーさん(ปอ ทฤษฎี สหวงษ์)が出演しています。2016年1月、デング熱により36歳という若さで亡くなってしまいました。

ความรักทำให้คนตาบอด(クワーム ラック タム ハイ コン ター ボート)

ボディスラム(Bodyslam)の代表曲のひとつ「ความรักทำให้ตาบอด」恋は人を盲目にするという歌ですね。

サビの少し手前の部分の「ラック(愛する)」と「シット(権利)」に注目ください。

รัก.. และยังคอยหวังดี ทั้งที่ไม่มีสิทธิ์
rák..  lɛ́ yaŋ khooi wǎŋ dii  tháŋ thîi mâi mii sìt
ラック レ ヤン コーイ ワン ディー  タン ティー マイ ミー シット

Bodyslamのトゥーンさん(ตูน)も、ローズさん(โรส ศิรินทิพย์)が歌うカバーも、両者とも私にとっては、รักは普通に「ラッk(/rák/)」に聞こえるけれど、สิทธิ์は「シッt(/sìt/)」ではなく「シンg(/sìŋ/)」みたいに聞こえるんですよね。
実際には、「シッtん〜」みたいに歌ってるんでしょうか・・・。

ちなみに、最初の「รัก」は、2人とも「ラーッk」と母音を伸ばして最後に「-k」を入れて歌っています。だから私的には違和感を覚えないんでしょうね。

■Bodyslam バージョン


ความรักทำให้คนตาบอด - bodyslam【OFFICIAL MV】


■ローズバージョン


ความรักทำให้คนตาบอด - โรส ศิรินทิพย์【OFFICIAL MV】

 

きっかけはこの歌「ฟ้าสั่ง」(ファー サン)

このように、昔からタイの歌の中では、末子音の「-k」がなんとなく「-ŋ」に聞こえるのが気になっていた私ですが、パッと閃いたきっかけになった歌があります。
それが、「ฟ้าส่ัง」(『空が命じる』の意味)という歌です。

タイのイサーン(東北地方)訛りの言葉で歌われているので、標準タイ語とは若干発音や語彙が違うのですが、紹介したいと思います。
哀愁漂うメロディが、失恋の切なさを伝えるいい歌なんです。

この歌は、私の空耳が盛り沢山の歌でもあります。

ฮู้สึก บ่แม่นบ่ฮู้สึก ว่าลึกๆ อ้ายบ่คือเก่า
คบกันมาหลายปี ฮอดมื้อนี้พอฮู้อยู่ว่า
เตะใจน้องเข้าป่า ไปแล้วแม่นบ่

น้องเจ็บ บ่แม่นน้องบ่เจ็บ
แต่ใจน้อง ยังฮักอ้ายคือเก่า
สิบ่ถามว่าผู้ใด๋ เข้ามาม้างทางฮักสองเฮา
น้องเต็มใจรับความเศร้า เพราะมีคนขอ


ฮู้สึก /húu sùk/ フースッk → 「フースンg」に聞こえる。
ลึกๆ /lʉ́k lʉ́k/ ルッk ルッk → 「ルッk ルンg」 に聞こえる。
เจ็บ /cep/ チェッp → 「チェンg」に聞こえる。

2年くらい前、この曲をよく聴いていたんですが、そのたびに、すごく気になったんです。

 


ฟ้าสั่ง - กวาง จิรพรรณ OST.ไทบ้านเดอะซีรีส์ 2 Part I【Official MV】


これらの音を何回も聞くうちに、
末子音/-k/ /-p/ の後にハミング的な「ん〜」を入れて歌っているんじゃないか!?
と閃いたんです。

この歌、けっこうこぶしのようなものを効かせて歌っているので、気づいたんですよね。
その気づきにより、今までの疑問が全部スッと解消されたような、爽快な気分になったのを覚えています。
まさに、天命(ฟ้าสั่ง)じゃないかと思ったくらい。笑

おわりに

いかがでしょうか。
私が言いたかったこと、なんとなくおわかりいただけたでしょうか。
説明が下手なうえ、うまくまとめられなくてごめんなさい。

というか、こんなニッチな話題、共感していただける方っているのかなあ。

私、まなお的には大発見のような勢いで興奮気味に書いてしまいましたが、
「で、それがどうした?」という感想の方がほとんどなような気もしてきました。笑

「ふつうに気づいてた」「知ってた」「聞き取れてた」っていう方もおられるかもしれません。

また、私の勘違いや間違ってる箇所があるかもしれませんが、ご容赦ください。
やさしくご指摘いただければ嬉しいです。

という感じで、
ほぼ自己満足の記事となりましたが、
長々と最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

ではまた。

 

 

<参考>
日本のうたにおける促音の音響的特徴(坂井康子)

特集「促音」1.特殊拍としての促音(窪薗晴夫)